第45話 選択期
「調べたよ。もう百合に落とすしかない。この学校でむぎを狙っている生徒を一覧にしました」
「百合か。それなら、って。私狙われているの?」
「調査によれば、大体どの先生も狙われている」
安心していいのかどうなのか。
「例えば聞いていい?」
「浮気?」
笑顔のハルカは目が笑っていない。
「興味本位で」
「裸の女に恥ずかしいポーズをさせて撮影することが好きな板垣」
「夜の公園でМ字開脚をし続けて通りがかった女の人を驚かせることが好きな秋田」
「後輩を呼び出してその気にさせたら飽きる山形」
「年上の女を奴隷にしてリードをつけて散歩する関内」
「相手がその気になったら創作意欲が高まり、縛って我慢をさせて官能小説を書く島根」
結構な際物だな。どっちかというとサディストが多いのか。マゾヒズムに見えるのかな私。
「それでどう落とすの?」
「この際物をぶつけることを考えたけど、こちらのリスクが高すぎる。だから百合になりたい女で落とす。何人か考えている。これから面接をする。審査員は高原由紀子先生だ」
「結構、堕ちた物ね。お付き合いしている女の子がいるのね」
「まだそういうものでは」
「まだね」
失言をしたようだ。
「今から高原先生に面談してもらうのはこのリストの方々です」
「私は百合に目覚めないわよ」
「何も知らない」
「女の子に体の授業をするのは」
「結構楽しいと思いますよ」
「二軍でも?」
「我慢させられたら爆発しちゃうかも」
「爆発したら?」
「食べるなり、何かご褒美を上げたり、男と違って妊娠とかないし」
「女の子は好きにならないけど」
「別に恋愛感情を持てとは言ってません。集まった子たちには衝立の向こうでアピールポイントを発表してもらいます。それと写真を見て選んでください。複数でも構いません。ということで中神先生。お願いします」
「一人目、コトリさん」
図書室の衝立の向こうで座る音がした。
「よろしくお願いします」
震えた声に「これはこれでいいわね」と耳に声が入った。
「ありがとうございます。お兄ちゃん、結局年上好きは変わりませんでしたが、相手に振られたと言ってます」
残された爪痕は深かったが、これ以上の罪を重ねることは無くなった。ただ、投書箱には一週間に一度、高原先生からの投書があるらしい。今回の女の子とのお遊びの反応やどんなお遊びをしたのかのメモが入っているらしい。
残された爪痕は深く。高原先生は百合だけではなく、自らのマゾヒズムを目覚めさせたのだ。あの面接会に私とハルカがいなければ良かったかもしれないが、これは避けることはどうしても出来なかった。
私たちは届いた投書の中身は見ずに導入された電動シュレッダーで裁断している。
ほかの投書はまばらで最後の冬休みに恋人が欲しいやら、ハルカ様一日でいいから純粋なお付き合いをしてくださいとか、うちの実家に来てください何もしませんからなどと言った不純なものが多い。これを投書するということは下心があるとしか思えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます