第36話 童貞くさい彼か、床上手な男子大学生か

「ブラジャー干してたら、怒られたので干すのに図書室貸してください」

 蒸れたから天日干しをしているところを女性教員に怒られたらしい。男性の教員もいるから考えろと、生徒は不満そうに下着一式を持って入ってきた。


「大丈夫、下はちゃんと洗っているから」

 ハルカさんは全身から入って来るな分かったなという顔をしているが、それはそこそこ付き合わないと分からないことを学習した方がいい。



「アイス食べる? ハーゲンはダメだよ。せめてパピコにしてね」


「あんたパピコ百六十円だよ」


「え、マジで? だったら百円ジュースでいい?」


「それは何の報酬だ?」


「え、お姫様がしゃべった」


「だからここでは干すな」


「中神先生どうやって調教したの?」


「失礼な、干すなよ」


「今日はもうそろそろ体の関係を意識するだろう童貞君とデートなわけ」


「あんた童貞好きだよね」


「今回は体が小さいから柔道で鍛えた腕力で抑え込めるわよ」

 柔道のわりには細い。もっと体が大きい人が多いと思っていた。


「今日は学校終わりに会うことになっているから、シャワー室で持ち込んだ高級シャンプーで汗を流して、ここで着替えてレッツゴー。ちょっと汗かいた方がポイント高いでしょ」


「干すなよ。フリじゃないぞ」


「えー、お姫様。ひどい」


「教員の私からしてもここをブラジャー干場には出来ない」


「ちょっと干すだけじゃん」


「本が焼ける」


「仕方ないね」


「童貞にはどう説明するのよ」


「童貞には部活で汗をかいたというしか」


「おい女」

 ハルカさんは急に口をはさんだ。


「女? 女ってここにはお姫様のぞいて三人いるけど」


「生徒の方だ」


「私たち?」


「本当に童貞なのか」

 話の根幹をゆるがす話題だ。


「ほう、お姫様。面白い事を言うね。童貞だよ。チラチラおっぱい見てくるし」


「ただ乳が好きかもしれない」


「手がいつも湿っている」


「多汗症の可能性がある」


「視線がうようよしている」


「要は乳をチラチラ見て、手が汗で湿っていて、視線がうようよしている男がタイプなだけで童貞と判断するには性急過ぎではないか。違う方の女はその男を見たのか?」


「違う方? いいけどさ。一回も見てない」


「客観的視点が無いのになぜ童貞と言い切れる」


「でも第六感ってやつだよ。女の予感みたいな」


「床上手だったら……」

 の言葉に四人ともハッと思った。


「童貞と思っておいて、実は床上手。ギャップに燃えてしまうかもしれない」


「マジか。あの男の子床上手なのか。今日、彼に体を捧げるのか」


「お前はどうなんだ。経験は」


「上は八十、下は十六」


「都条例」


「十六は女の子だしセーフでしょ」


「あんたって両刀だったの? 私は狙わないでね」


「バイの全てがノンケに手を出すと思うなよ。そうか彼、二十だし今日は車ックスかな。景色がきれいなところで二人でいちゃいちゃ。ん?」

 柔道の彼女がお尻に手を当てた。


「どうしたの?」


「先生、生理来たけど用意忘れたから貸してくれない?」

 柔道の彼女がトイレに行った後、が口を開いた。


「私のお兄ちゃん大学生で今日は女と夜景見た後、セックスしてくるから飯いらないってメッセージが来て、うちのお兄ちゃんっていかにも童貞と思わせて女を食うことを思わせてから持ち込むことが多くて、そのもしかしたらあの子。今日、生理だって言ってらになんて言われますかね」


「それより用意する必要がなくなった下着類を回収してくれ」


「水洗いしちゃった」


「図書室の中じゃなかったら、廊下でも使ってくれたらいいよ」


「干す台あるの?」


「古い椅子なら」


「ありがとう、なかちゃん。携帯で来たけど、下着が入ってないって言っている」

 なんとか調整をつけて二人は図書室で宿題をし帰って行った。


 まさか次の日から図書室の前は天日干し可能と噂を流されると思わなかった。

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