第18話 シスターVS靴下
クリスマスだけど、行くところが無い。クリスマスの一週間前に新しいシスターさんが入ってきた。一週間ではどうにも出来ないので、補助教員が聖歌隊の指揮をすることになった。
新しいシスターは前の温和な人と違って少し厳しそうな人だった。スカートの折り目には厳しく、三年物にする予定の靴下を没収し、ダニは放置した。三年計画物はさすがに悪魔だと泣き叫んだ生徒がいたらしい。
「シスターは悪魔ではありません。清く正しくあるのが信徒の勤めです。靴下は清くではありません」
「明日洗うから返してください」
「ゴミなので回収です」
ではなぜダニを放置したかというと、ダニは生き物なんで無下に殺せないと判断されたらしい。
「なぜダニはダメで、靴下はいいのでしょうか」
今日、ハルカさんは風邪で休みだ。抵抗してやってくるかと思ったが、あまりここに執着は無いらしい。ハルカさんの家に駐車しに行った時に今日はお一人でと言われた。
「
「そうだ。なぜ靴下はダメで、ダニはいいのですか」
「価値観の問題かと」
「靴下は最近かなり香ばしくなってきました」
「その水分量では」
「湿っぽい日は乾燥機の近くに置いて、乾燥している時は教室で干していました」
「文音。毎日湿度測っていたもんね」
嫌だな、靴下を湿度管理されている教室で授業するの。
「臭い、怖いというイメージを一新すべく様々な場所で街宣活動をしました。生物研究会から靴下に発生する菌類の採取を提案されましたが、固辞しました」
「なんで?」
「私の靴下は汚い物ではない」
文音よく言ったと、仲間から賛辞の声が上がった。
汚いけどな、シスターさんもなんて厄介な生徒を相手にしたのか。
こんな相談飛び込みで来たらハルカさんは絶対に追い出しているだろうな。
自分の人の良さが憎い。
「それで何を目標に?」
「私達は一年生です」
そうだよ。それが問題だよ。
一年生でこの仕上がりようは女を捨てているとしか思えないのよ。
それに最初の目的が池淵を三年物で落とすことだったはずだ。
その池淵がいないのに何をどうしようとする気でいるのか。
「二年後、とても面のいい男性教員が来るかもしれません。出来れば可愛い男の子の様な人物がいいです」
文音さん赤面しながら言うことでは無いと思います。
「なかちゃん。文音は、ぼくひとにハマったの。生物研究会のせいで」
「ぼくひと?」
「僕一人でお留守番出来るもんです」
「それが何?」
「可愛い男の子が画面の向こうから色々なお願いをするんです。それに答えて時には厳しく、時には優しく。でもその開発はパソコン研究部がやっていて、生物研究会は下請けだったんです。私は愕然としました。全てはパソコン研究部の手のひらの上だったんです」
「文音。しっかり」
何がしっかりか分からない。
「でも一回しゅうくんを目に入れてしまったらもう何も考えることが出来なくなりました」
「しゅうくん?」
「北大江小学校の三年生です」
「ぼくひとは北大江小学校から帰ってきたしゅうくんがお母さんメモを元にお使いをする健全なストーリーなのです。その中にお姉ちゃんお願いモードがあって、しゅうくんは一日に一回だけランダムにお姉ちゃんお願いと言ってくれるんです」
「それで、その靴下はどこにいった?」
「そうなんです。あのシスター、靴下だけではなくぼくひとも没収しやがって、返してくれるように署名活動の参加をしていただけませんか?」
「大人的事情で出来ませんが応援してます」
考えるべきだった。ガキがシスターに「中神先生は署名はしないけど応援してる」と、言うかもしれないことを。
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