第11話 毎月五千円のパパ
「パパに会いたくて」
体を売ったわけではない。
ただ、休日の暇な時間に男女とご飯に行って、デートする生活を送っているし、友達と一緒に行くから怖いことも今まで無かった。
報酬はバーコード決済出来るアプリに支払い。
たまに友達無しで会おうと言ってくる大人はいるけど、その時は即ブロックしていた。
ところがこの商売を始めてすぐに太郎という名前で毎月五千円入金があった。
最初はラッキーだと思っていたが、変な噂を流されてお小遣いが無くなった時も五千円に助けられた。
いくら荒稼ぎしていても五千円はすごく高いお金であることは分かる。本当に収入が無い時は派遣でアルバイトしているからよく分かるらしい。
「ずっとアルバイトすればいいのに」
「先生、人間はいくらでも贅沢出来るけど、ちゃんと貧乏した方がいいよ」
それで見たことの無い太郎に会ってお礼を言いたいという。
「家族構成はどうなんだ」
「お母さんと弟と猫」
「その猫ひっかいたりしない」
「最初は大変だったけど、日数が経つとなつくようになったよ。先生も猫飼っているの?」
「猫じゃないけど、苦労はしているの」
大変そうだねと、小さく笑われた。
「お父さんは?」
「知らない。女作って出て行ったってお母さんが、その話をすると機嫌が悪くなって、その」
「言いたくないことは言わなくてもいい」
「弟に物を投げるの。それもあって弟は家に帰って来なくなってさ、家庭崩壊の危機ってやつ? もう本当にヤバいの。本当は何も言わずにずっと五千円欲しいけど、五千円とお母さんのパートで頑張れた時期あったからさ」
あれ、これ美談だね。
「何を目頭を押さえている」
「いい話だね」
「は?」
ハルカさんは本当に分からないようだ。
「だって、パパと遊ぶのも家にお金を入れる為でしょ」
「半分はね。最近のパパやママは女子高校生とデートに行くだけで五万円くれるのよ。友達も一緒だから、安心だし。でもさ、こういうことする子が増えてきて、慣れてる感して面白くないって言われてさ」
「そのうち、友達はガールズバーにお前を紹介する」
「え、なんで分かるの? 高校生不可だって言われたから、高校生でも出来るキャバクラに紹介するって」
「派遣は?」
「十分貧乏したし、もう未来明るいって感じでさ。お金も今の三倍くれるし、五万は家に入って」
「キックバックは?」
「え?」
「そのお友達に渡すお金よ」
「なんか疑ってる? 一万って言われた」
「箱持って来て」
この子、騙されやすい子で悪い子じゃないけど、吉永先生扱いするのか。
「何これ」
「中に二個のカプセルが入っている。一個は五千円パパに、もう一個は普通の生活に。忘れないでね。どっちもは無理だから」
「キャバクラも? いいじゃん、みんなやってるよ」
しばしの無言があった。
「お金保証してくれる?」
「五万円くらいなら、他の人に紹介しないでね」
そう言って、カプセルを取らせた。
「いつから分かっていた?」
「派手に遊んでいたら、自分の娘くらい分かるわよ。特に女で失敗する男はそういう情報にさといわよ」
罪滅ぼしで、五千円送っていた。
「それであの子、バイトは?」
「事務の勉強と学校には言っているけど、窓を磨く才能はあるわよ」
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