第1章 幸せへの道しるべ
第1話 普通の日常
「私の…親戚?」
父からは親戚は世界各国へ散らばって、もう何十年も会っていないと聞いた。
それに、いたとしてもこんな私を助けにくるなんて…
「私は今、極東の鳴神というところに住んでいるの。貴方が良ければ、私と一緒に暮らさない?」
頭が真っ白だった。
起きるや否や、親戚という人に話しかけられしかも異国の地で暮らす…?
そこに行って、何か変わるのだろうか。もしかしたら、私の知らないことがわかるのかもしれない。
だけど…
「すみませんが、私はこの国から離れる気はありません。父と共に暮らしたあの家と、私自身のために。」
そう言うと、女性は静かに席を立った。
「わかったわ。でも何か助けが必要な時は、ここに電話してね。」
そう言って渡された名刺を見ると、私は驚いた。
そこには、(財団法人コンダクター)と書かれていた。世界的にも有名な財団で、確か異国の大統領がその財団の設立者だと…
「ありがとうございま…」
感謝の言葉を伝える前に、彼女はどこかへ行ってしまったようだ。
その後、主治医からの説明を受けた。
ここは財団の持つ病院で、プライセン第二の都市ミューにある。君の住んでいた家には指一本も触れてはいないし、君に何かをするつもりもないと。
しかし、度重なる投薬実験のせいで君の身体に何かしらの変化が起こる可能性があるとだけ言われた。幸いにも内臓が傷ついたりしていることはなさそうだ。
「このまま安静なら、すぐに退院できるでしょう。」
退院…そう聞いた時、何故か安心しなかった。
ここを出た後に、私はどこへ行けば良いのだろう。家と巨額の資産があるとは言っても、いずれは底をつく。何かしなくては…
一週間後、私は何も決まらないまま退院した。
故郷の家に帰っても、何もしないで寝ているばかりだった。
いっそのこと、死んでしまった方が本当にマシかもしれない…何度もそう考えた。でも、父さんから貰ったこの命を捨てるなんてできない。
「そうだ…」
私は貰った名刺を手に取り、電話をかけた。
「もしもし…あら、貴女ね。退院できたと聞いて何よりだわ。」
電話に出たのは、あの時の彼女だった。
「あの…今後のことで相談があって。」
「分かったわ。なら…明日の午後三時、ベルランのカフェ「シュタイナー」に来て頂戴。」
言われた通りのカフェに来た。
テラス席に彼女は座っており、私に気づくと手を振った。
「態々来てくれてありがとうね。」
「いえ…私の方こそ。」
「本題だけど…今後のことって?」
「私…賠償金で巨額のお金をもらったけど。でも何かの職には就かなきゃいけないし…だけど、戦争孤児だからどこにもつけなくって。」
「なるほどね…」
「何かお力をいただけないかなって…」
そう言うと、彼女はしばらく黙り込んだ。それから、ゆっくりと目を開けて私に話した。
「あなた、政治に興味はあって?」
アイネ・クライネ・ルーヴェシュトリー ミア・スターリング @kokusutia
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