アイネ・クライネ・ルーヴェシュトリー

ミア・スターリング

プロローグ

これは、プライセンの歴史には語られないもう1つの物語。

儚くも美しく、残酷な1ページ。


ヒトラーがプライセン共和国へやってくる30年前、共和国は帝政プライセンとして、世界にその名を轟かせていた。しかし、もっと広大な土地と資源を求めて他国との戦争が行われていた。圧倒的な力の前に周辺国は次々と降服し、帝国は巨大な力と領土を手に入れた。


そしてある時、首都ベルランにて皇帝の息子がリーグレのスパイに暗殺される事件が起きた。皇帝は激怒し、リーグレヘ宣戦布告。するとリーグレの友好国であるアルザスも宣戦布告し、世界大戦が始まった...


場所は変わって、ベルランから数十キロ離れた田舎町ヴィックス。

森の中にある小さな小屋にリーゲンとその父親が二人で住んでいた。父親は病弱なリーゲンのため、毎日山へ薬草を取りに行ったり、治療魔法の勉強をしていた。


「父さん...私なんかより、自分のことを...」


「何を言うんだ。父さんは君のためならなんだってするんだ。さあ、もう横になって。」


そんなある日、父親は帝国から招集を受けた。

帝国の人員が足りず、成人男性はみな召集を受けるのだと...

父親はリーゲンを国立の病院へ入れる代わりに、遥かかなたの地へ出て行った...


病院に入ったリーゲンは、手厚い治療によって走れるぐらい回復した。

しかしながら、父親以外に親戚もいない彼女は毎日を病室のベットの上で過ごすばかりだった。時折、あの暖かな目で見守ってくれた父親のことを思い出しては、月の光にさらされて涙を流した。


数日後、彼女のもとに手紙が届いた。

帝国軍からだった。父親は遥かかなたのリーグレにて、戦死したということと、孤児扱いになり帝国の孤児院へ入れられることになることが書かれていた。

突然のことで、何も考えられなかった。父の遺品すら、何もなかった。彼女はひどく落ち込み、孤児院に入ってもずっと一人だった。


やがて戦争が激化すると、ベルランには連日のように攻撃が相次いだ。

リーゲンのいた孤児院も敵の魔法使いや攻撃により破壊された。だが彼女は生き残り、進駐してきたリーグレの軍に捕らえられた。彼女が孤児だという事がわかると群は彼女を実験のために扱った。毎日10もの薬をのまされ激しい頭痛と嘔吐に苦しんだ。自殺して、父親がいる所へ行こうと何度も考えた。


しかし、彼女はそうしなかった。自分にこんな運命という服を着させた全員を、この手で葬るその日まで生きてやる。そう心に誓った。


捕らえられて2年。プライセンの降伏により、条約にのっとって彼女は解放された。

リーグレ政府からの賠償金として、大量の財産を得たが何かを大量に買ったり、豪華な家に住むこともなく彼女の育った家へ帰った。


それからであった。彼女が投与され続けた薬によって、彼女のDNAはめまぐるしく変貌を遂げた。それに耐えられないと体が悲鳴を上げるように、彼女は血を大量に吐き、生死をさまよった。


気が付くと、彼女はベットの上にいた。

起きてあたりを見回すと、1人の女性が座っていた。


「起きたのね...体調はどう?」


「あの...あなたは誰?」


彼女は、リーゲンの遠い親戚といった。

名前はまだ言えないが、あなたの味方だと。

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