第13話 街まで送ります

 盗賊を討伐して、その奥へとやってきたところ、女性が2人ひどい状態で倒れていたので介抱した。すごく恥ずかしかったけれど、2人も無事に意識を取り戻した。


「えっと、終わりました」

「えっ、あっはい、ちょっと待っててください」


 介抱の後、着替えるという2人をよそに盗賊のお宝を探っていた私に着替えが終わったと声がかかった。でも私はまだちょっとお宝を探っている最中だったので、ちょっと待ってもらうことにしたのだった。


「えっと、すみません待たせてしまったみたいで」

「い、いえ、えっと、それで、本当に盗賊はあなたが?」

「はい、そうですよ。あっ、改めて自己紹介しますね。私はリサ、こんな格好ですけど傭兵です。ここにはちゃんと傭兵に見えるような服と防具を買うお金を手に入れるためにやってきて、だからお二人がここにいるということは知りませんでした」


 私は改めて正直に自己紹介をした。尤も名前は嘘だけど。


「えっと、ごめんなさい。私はエネルといいます。この子は妹のナナエラです。助けていただいて本当にありがとうございます。このご恩は一生忘れません」


 ちょっと大げさな気もするけれど、もし私が同じ立場だったら同じように思う気がするから、ここは素直に受け取ることにした。


「助けられたかといわれると、ちょっとって思いますけど、御無事でよかったです」


 ひどい目にはあったけれど、命に別条がなくてよかったと思うことにしよう。


「えっと、お二人はどこに行こうとしていたんですか、よければ街まで送りますよ」

「えっ! で、でも」

「私は特に目的地があるわけじゃなくて、今は傭兵として活動できるように装備を整えている最中なんです。でも、お金がなくてこうして盗賊討伐してお金を得ようとしているんです。それも今何とか得ることができて、あとは街に行って整えるだけなんですよ」


 今現在の私には目的とする場所はなく、装備を整えることのみが目的、だから装備を整えることができるのならどの街でも問題ない。だったら、この2人を目的地まで送ったとしても問題ないし、せっかく助けたのに途中でまた盗賊に見つかったり、魔物と遭遇してしまったら、助けた意味がなくなってしまう。


「そうなんですか……それではすみませんが、あっ、それと、服をお求めならお手伝いできると思います。私たちはハンノルンという街にいる叔母の元へ行くつもりで、叔母は服屋を営んでおりますから。リサさんが求めるような服も置いてあると思います」

「ほんとですか助かります」


 2人の目的地であるハンノルンという街はここから街道に戻って、東にさらに進んだ隣街、そこはたぶん私も次に行くことになっていた街でもある。というか2人は目的地にようやくつくというところで捕まってしまったんだね。


「それじゃ、そろそろ行きましょうか、いつまでもここにいても仕方ないですし」

「ええ、そうですね。お願いします」


 というわけで私を先頭に歩き出したわけだけれど、そこであることに気が付いた。


「あっ、えっと、エネルさん、ナナエラさん、この先は目を閉じていた方がいいです」

「目を、ですか?」

「?」


 2人はよくわからないのか首をかしげている。


「えっと、この先の広場で盗賊たちが宴会をしてて、そこを襲撃して倒してるので、その、私そのまま放置してるから」


 そうこの先の広場では盗賊の死体が多数転がっている。傭兵である私は見慣れたものではあるけれど、普通の女の子にはちょっときつい光景だと思う。というか前世の私だったら間違いなく気絶すると思う。


「そ、そうなんですか? お、お姉ちゃん」


 ナナエラさんはおびえるように、姉のエネルさんの裾をつかんでいる。やっぱり怖いよね。


「だ、大丈夫よ。えっと、そうですね。確かに目を閉じたほうがいいかもしれません。でもそれじゃ、歩けないし、どうすれば」

「それなら、私が誘導しますよ。私は一応見慣れてますし、何より自分が作った光景ですから」


 自分で作っておいて怖がっていたらどうしようもない。


「わ、わかりました。お願いします」

「いえ、では行きますよ」


 その後私は、2人を誘導して盗賊の死体や転がっている瓶やごみなどをよけつつ、何とか広場を出たのだった。


「このまま洞窟を出ちゃいますね」

「は、はい」


 ここら辺には死体が転がっているわけではないけれど、このままの状態で洞窟を出てしまうことにした。

 そうして、さらに歩くこと少し、ついに洞窟を出ることができたのだった。尤も、そこで、2人分の死体が転がったままであることに気が付いた。


「えっと、洞窟は出ましたけど、ちょっとここで待っていてもらえますか、あっ、目は閉じたままの方がいいです」

「わ、わかりました」

「一体、何が?」


 素直云うことを聞いてくれた2人を置いて私は、入り口の死体をサクッと片付ける。普通に考えると大の男の死体なのだからものすごく重いと思うけれど、私もそれなりに鍛えているので難なく持ち上げることができる。それを、洞窟の中へと運び入れていく。


「すみません、もういいですよ」


 私がそういうと、2人はゆっくりと目を開けると、そこが外であることでほっとしているみたい。


「お姉ちゃん」

「ええ、私たち助かったのよ。リサさん改めてありがとうございました」

「いえ、えっと、街へ向かう前にちょっとやることがあるので待っててもらえますか」

「いいですけれど、何をされるのですか?」

「ちょっと、後処理をしないといけなくて」

「後処理?」


 

 2人はわかっていないけれど、これ、結構重要なことなんだよね。というのも、これから私がやるのは死体の処理、これをしないとこの世界ではアンデッドに成ったり、魔物を呼び寄せてしまう原因になったりするからね。だから、ちゃんと死体は焼却するかしないといけない。というわけで、まずは死体の焼却処理をする。


「ファイアーボール」


 洞窟の中に向かって炎の弾を撃つ、これが洞窟内で爆発して、中の死体を燃やしてくれる。


「アースウォール」


 今度は土魔法で壁をせり上げて洞窟内をふさぐ。これで中が密閉されることで温度が上昇して中にある死体を完全に焼却しくれるというわけだ。


「え、ええと、何を、されたのですか?」

「どうして、そんなことを?」

「中にある死体がアンデッドにならないようにと、魔物が中で巣を作らないようにするためです。こうしないと危ないですから」

「そういうことをするんですね。知りませんでした」

「まぁこれは私たち傭兵じゃないと知らないようなことですからね。えっと、処理も終わったしそろろそ行きますか」

「はい、お願いします」


 というわけで、私たちはハンノルンへ向かうことになったのである。

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