第10話 やっぱり、盗賊だよね。

 胸当てを作った翌日さっそく身に着けてみた。


「やっぱり動きやすいね。でも、この服が問題なんだよね」


 いくら胸当てをつけて動けるようになったとしても、結局今の恰好が村娘。これじゃぁ動きずらいし、何より見た目がおかしい。


「これじゃ、魔物を討伐しても素材を買ってくれない可能性があるよね。となるとやっぱり盗賊かな」


 魔物を討伐した場合は素材を売ることで収入を得たり、依頼が出ていた場合はその報酬がもらえる。しかし、私の恰好で素材を売りに行っても買ってはもらえるかもしれないけれど、誰かのものを盗んだとかそうしたことを疑われて安くされるか、下手したら通報されてしまう。依頼の場合も同じで、私が討伐したといっても信じてもらえないから報酬ももらえないと思う。

 そうなると、やっぱり盗賊討伐しかない。盗賊も依頼が出ているので報酬はもらえないけれど、盗賊は盗んだお金などを所有している場合がある。そしてそれらは討伐した人のものという決まりがある。だから、お金はそのまま使えるし、そうじゃなくとも売ることもできる。まぁ、その場合もあまり高価なものは無理なんだけどね。それでも現金がすぐに手に入るのはいいし、盗賊によっては結構な大金が手に入る。


「そうと決まれば、さっそく情報収集だね」


 決まったところで盗賊について情報を得ることにした。

 ところで、その情報をどこで得るのかというと、それは街ならどこにでもある中央広場。ここには掲示板が設置されており盗賊を始め魔物などの情報から、傭兵に対する依頼などが張られている。通常傭兵はここから情報と依頼を獲得して仕事に取り掛かることになっている。


「どんな盗賊がいるかな」


 盗賊退治なんてものは久しぶりで、ちょっとワクワクしてしまっている。

 ちなみにだけど、明らかな村娘が掲示板を見ていて、おかしくないかと思うかもしれないけれどそれは問題ない。というのもこの掲示板は傭兵だけでなく旅をする人や別の街や村へ行く人が情報収取のために見ることがあるからだ。というかもともとその目的で設置されたもので、傭兵の方がおまけなんだそうだ。

 ということで見ていると、どうやら南側の街道にちょっと規模の大きな盗賊が出るようだね。


「これはさすがにないかな」


 私は曾祖母の力を受け継いでいるだけあり、結構強いという自信があるけれど、さすがに情報通りの規模となると1人じゃ無理だと思うから、もう少し規模の小さめの盗賊を探す。


「だからといって小さすぎるのもね」


 規模が小さすぎると、その分貯めているお金や盗品の数も少ないため、討伐してもうまみがない。


「あっ、このあたりがいいかも」


 少し規模は大きめな気はするけれど、このぐらいなら私一人でもなんとかなりそう。ということで情報は得られたので、さっそくその場所へ向かうことにした。


「えっと、東の街道だったよね」


 情報によると、その盗賊は東の街道を半日ほど歩いたところあたりに、出現したというものだった。つまりアジトなんかも、そこからそう離れていない場所にあるということ。


 そんなわけで、東側の街道を進むこと半日が経過。


「そろそろ出てきてもおかしくないと思うけれど、いないな。もしかしたら今はアジトにいるのかな」


 傭兵として育った私は、当然魔法を使わなくても気配を読むことができる。そんな私でもこのあたりには一切人の気配を感じない。


「となると、サーチ」


 気配を読むことができないなら、ちょっと範囲を広げたサーチの魔法を発動してみた。


「あっ、端の方に何か引っかかった。もしかしたらこれかな。ちょっと行ってみよ」


 サーチの範囲の端に数人かかたけれど、その場所はおそらく森の中だから盗賊だと思う。


「来てみたけど、いるね」


 反応のあった場所へ到着し、木陰から様子を見てみると、そこは洞窟で見張りだろうか、ちょっとやる気なさそうな男の人が2人。服装もなんというか汚そうだし、何より身に着けている鎧もところどころ壊れている。その様子からして明らかに盗賊とわかる。


「とりあえずあの見張りを何とかしないといけないかな。といっても同時じゃないと騒がれて最悪中からいっぱい出てきちゃう」


 以前盗賊退治をしたときは仲間がいたので、協力したことで問題なくできた。でも、今は私1人しかいないからどうすればいいのか、ちょっと悩む。

 うーん、やっぱり陽動しかないな。


 とりあえずの作戦が決まったところで、さっそく動き出すことにした。


 まず向かったのは洞窟の右側、そこで適当な石を拾う。それを反対側に向かって思いっきり投げる。

 すると、左側で石が落ちる音がする。


「なんだ?」

「誰かいんのか?」


 音がしたことで見張りの2人が一斉に左側を見たので、そこから素早く動き、手前にいる人を斬り伏せる。


「グハァ!」

「えっ!」

「アイスアロー」

「ぐほぉ」


 もう1人は少し距離があるために今度は魔法で対処したことで、問題なく見張りを倒すことができた。


「ふぅ、何とかなった。あとは洞窟内だけど、サーチ、えっと、人数にして12人かな。あっ、でもそのうちの2人はちょっと弱っている感じがするから、もしかしたら捕まっている人かも、あっ、でも病気って可能性もあるよね」


 盗賊のアジトというものは衛生的にあまりいいとは言えない。そのため盗賊の中には病気になってしまう人もいる。もしかしたら弱っている2人はその人達かもしれない。


「どちらとしても、警戒して進むしかないよね」


 というわけで私は警戒しながら盗賊のアジトに乗り込んで行く。

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