第9話 これで戦える。

「ご飯まで時間あるし、少しだけでも作っておこうかな」


 夕飯までは時間があるので、その前に少しだけでも胸当てを作っておこうと思う。

 というわけでさっそくリュックサックから、買ったばかりの革や道具類を取り出していく。


「まずは採寸しないとね。たぶんサイズも多少変わっていると思うし」


 私はまだまだ成長中なのでサイズも変わっている。というか私まだ胸が大きくなっている気がするんだよね。もうすでに前世を超えているわけだし、もういいんだけどなぁ。

 そういうことで、採寸のために服を脱ぎ上半身裸となる。


「えっと、ひも紐っと、あったこれでいいかな」


 採寸だからといってこの世界にメジャーというものはないから、適当な紐で図ります。まずは、首の幅、両脇の幅、トップの幅、アンダーの幅をそれぞれ図っていく。そのあと、今度は脇からアンダーまでの長さ、鎖骨あたりからトップを通りアンダーまでの長さを図っていく。


「やっぱり、記憶よりも大きい」


 採寸した寸法をもとに革に記していく。


「やっぱりV字がかわいいよね」


 胸当ての首元というのは大体まっすぐになっていてあまり可愛くない。そこで私は以前から首元をV字にしている。実はこの形は村で流行って、村の女性たちはみんなこの形だった。でもみんな同じといっても人によって深さが違っていたかな。私なんかはあまり深くせず、鎖骨の間のくぼみより少し下まで見える程度にしていたけれど、人によってはもっとふかくしてビキニみたいに胸の谷間がしっかり見えるようしている人もいた。

 こうして記していった線をもとに裁断用のナイフで革を切っていくわけなんだけれど、これが難しい。なにせこの世界に定規というものがないためにまっすぐ切れない。それでも頑張って切って何とか形を整えていく。


「あっ、もうこんな時間だ。休憩にしてご飯にしよ」


 革を切り終わったところで夕飯の時間となったために、とりあえず作業は中断してご飯のために1階に降りていく。


「すみません、おすすめください。それからお部屋で食べるので持ってきてもらえますか」

「はいよ。ちょっと待ってね」


 宿の1階は酒場となっており、多くの人がお酒や食事を楽しんでいた。そこで受付をしていたおばさんにおすすめを注文した。私はこういう時おすすめを注文することにしている。そうした方がおいしいものが出ることが多いからだ。それから、お部屋で食べるといった理由は、単純に私のような女の子が1人でご飯を食べていたら、間違いないく男性に絡まれるからです。

 実は旅を始めた頃、何も知らない私は当然酒場で食べていました。そこにお酒に酔った男性に絡まれてしまい、私はどうすればいいのか悩んでしまった。まさかただの女の子を演じているのに男性を投げ飛ばすわけにはいきませんから。でも、その時はお店のおばさんやおじさんが助けてくれて、その時にもらったアドバイスがなるべく部屋で食べたほうがいいということだった。

 それから部屋に引き返して、ご飯が来るまでに簡単に部屋を片付けていく。そして、片づけ終わったところでノックがした。


「お待たせしました。食べ終わったら扉の前に置いておいてください。あとで獲りに来ますので」

「あっ、はいわかりました」


 ご飯を持ってきてくれたのは私と同じぐらいの女の子で、ぱっと見さっきのおばさんと面影が似ている気がするのでたぶん娘さんかな。そんなことを思いつつも美味しそうなご飯に少しお腹が鳴ってしまった。


「食べよ。わぁ、ほんと美味しそう……うん、おいし」


 それからおいしい料理を食べたのち、食器を言われた通り扉の外に置いておいてから、先ほどの続きをすることにした。


「裁断が終わったから今度は縫製だね」


 次の行程は縫っていくわけだけれど、その前にコバ処理というものをしていく。これで裁断面が綺麗になってほつれのようなものがなくなる。それから首のV字になっているところに革ひもをつけて、次に両脇の部分にも長めの革ひもをつけていく。最後にアンダーの端部分に穴をあけて金具をつける。


「完成っと、まぁ装飾がないからかなり無骨な感じになってるけどひとまず完成だね」


 できたものを確認するためにさっそく身に着けてみることにした。

 というわけで再び上半身裸になり、まずは胸当てを体に当てながら首の後ろで革ひもを結ぶ、そのあと脇の紐を背中に回して交差させるように右の紐を左側に作ったアンダー端の穴へ入れて、左の紐も同じように穴に通す。


「あとはこれを左右入れ替えてっと、それから引っ張ってから前で結ぶ……よしっ、完成!」


 ここで体を左右にひねってみたり、軽く上下に動いたりしたけれど、胸がしっかりと固定されている。


「これなら、全力で動いても大丈夫だね。ただ、これだとちょっと見た目がねぇ」


 今現在の胸当ては通常通りの革のみ、普通はこれにちょっとした装飾をして何とかかわいくしている人が多い。しかし、私はそれでは満足できず、これに布を巻いたりしてもっとかわいくする。今回もそのために裁縫屋さんでいくらか布を買った。これから、それを作ろうと思う。

 さぁ、頑張るぞー!


 革で胸当てを作る時よりも気合を入れて、どんなデザインにするかを考えていく。


 こうしてたっぷりと時間を変えて何とか寝る前に作り上げることができた。

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