第6話 狩ったら、解体をしなくちゃいけません。

 動物を狩るための道具として、弓を作ることにした。


「弓の材料は、木と紐、紐はあるからいいとして、木は落ちてる枝でいいかな。あっ、矢もいるね。まぁ矢も同じで枝を拾おう」


 ということで近くにある枝を拾うことにした。


「ええと、あったあったこれこれ」


 私が拾った枝はカリュの木、カリュというのは、ここら辺の森なら大体どこにでもあるもので、丈夫でよくしなる。弓を作るには適している木だ。これを削って弓の形にしていく。


「ナイフナイフっと、あったあった」


 何かちょっと楽しくなってきてしまいながらも、背中に背負ったリュックサックからナイフを1本取り出す。このリュックサックはメグイットを出るときに、おばさんがくれたものだ。ナイフは帝国兵からもらった(奪った?)もの。


「やっぱり、削りにくい、このナイフ手入れしててよねぇ」


 帝国兵からもらったものは、どうも手入れがされていない。そのために切れ味がものすごく悪い。ナイフだって武器、武器である以上戦闘職の人にとっては生命線となる。その手入れを怠るなんてほんと帝国兵って駄目だよね。


 そう思い愚痴りながらも、何とか弓の形に削り終わった。


「あとは、これにおばさんにもらったこの紐を巻き付けてっと、よし、弓完成!」


 できた弓を構えて弦を引いてみる。うん、よくできてるこれなら問題なく使えるね。それからゆっくりと弦を戻し、今度は矢の制作に入る。


「矢は、木を削るだけだから簡単なんだけど、問題はまっすぐの枝を探さないとね。曲がってたらまっすぐ飛ばないし」


 というわけで、周囲を見渡してまっすぐな枝を探してみる。矢は特にどんな木でも大丈夫なので、そこにこだわらずとにかくまっすぐなものを探していく。


 それからしばらく探し回って、何とか5本見つけたので、あとはこれを削り、先をとがらせていく。


「うん、完成。これで何とか5本の矢ができたね。あとはこれを試し打ちしてみてっと」


 さっそくできた矢を先ほど作った弓にあてがい、引いていく、そして的に見立てた場所に向かって放つ。


「ああ、やっぱりちょっとずれるか、となるとこうかな」


 あらゆる武器を使いこなした曾祖母の力を受け継いだことに、恥じずうまく調整し、的を射ることができた。


「これで大丈夫かな。それじゃ、獲物を探しにいこっ」


 なんだか狩りなんて久しぶりで、ちょっと楽しくなってきた。ワクワクする気持ちを抑えつつ、再び歩き出す。


「あっ、でも次の街の近くの方がいいよね。きっと重いし」


 さぁ、獲物を探そうというところで、もしここで獲物を狩ったとしても、それを売るために街へ売りに行く際に持っていかなければいけないことに気が付いた。解体するとはいえ、できれば多くの素材を売りたいから、できることなら持てるだけ持ちたい。

 ということで、もっと街へ近づいていきたいと思う。



 街道をしばらく歩きようやく街に近づいてきた。


「このあたりでいいかな。それじゃ、さっそく、サーチ」


 サーチというのは周囲に魔力を飛ばして近くにいる人や動物、魔物を探知する魔法で、狩りなんかでも重宝する魔法だ。


「ここら辺にはいないか、それじゃもうちょっと奥に行ってみようかな」


 今回サーチをかけた場所は街道から少し入ったところだから、ここからさらに森の奥へ入った見ることにした。動物は人がいる街道よりも、人が来ない奥の方にいるからね。


 そうして奥へ進んだところで再びサーチを使ってみたところ、前方300mほどのところに何やら動物がいることが分かった。どうして動物かわかったのかというと、まず見たのは魔力反応、魔物なら強い反応が返ってくるのに今回は小さい。ということは動物か人となるわけだけど、形が明らかに四足獣のものだった。あっ、でも人でも魔力が強い人は魔力反応が強く出る、例えば私みたいに魔法を使う人とかね。


「ここからは静かに進まないといけないね」


 ここから先は無駄口をたたかないようにしないと、私ってよく独り言を言っているからな。気を付けないと。


 というわけで静かに黙って、ゆっくりと気配を消しながら反応があった場所へと向かって進んでいく。そうして、近づいてくると遠くに動物が見えてきた。

 おっ、あれだね。シカかな、よかったあれなら結構高値で売れる。


 シカというのはどこにでもいるから、買取も安いのではと思うかもしれないけれど、実は警戒心がとても強く本職のハンターでもめったに獲れないから、市場にあまり出回らない。


 警戒心が強くて、普通なら人が来た気配を感じてすぐに逃げ出す、でも傭兵として育った私は気配の消し方もしっかり教わっている。その結果、シカも私の気配を感じることはない。ましてや、150mは離れているからなおさらだ。そんなわけでさっそく背負っていた弓をゆっくりと外して構え、矢をつがえ、ゆっくりと深呼吸をしてからこれまたゆっくりと弦を引いていく。

 そして、一瞬呼吸を止めたのち、一気に放つ。


 すると、矢がまっすぐにシカへ向かって飛んでいき、その頭部に命中。


「やったね」


 私が狙ったのはシカの頭部1つ分左側、しかし放った矢は頭部に突き刺さった。というのもシカの動きを読んで矢が届くころに頭が来るであろう場所を狙ったというわけ。


「このサイズなら大丈夫そうかな。それじゃ、さっそく解体しよ」


 シカを狩ったら、解体しないと持ち運ぶこともできない。いくら私でもシカをそのまま担いで歩けない。重いし、というか見た目がやばいでしょ。

 村娘の恰好した女の子が、シカを担いで街に入る。うん、どう考えてもやばいよね。


「えっと、まずは血抜きしないとね」


 血抜きをするためにシカの頭部を下に向けるように近くの木につるして、頸動脈あたりを斬る。すると、どんどん血が抜けていく。


「あとはこれで放置しておけばいいね」


 ここで、しばらく周囲に警戒しながら待つことにする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る