第5話 私、決めました。

 おじさんの案内で寄ったメグイットの村、そこにいたおばさんのおかげでやっと体を洗い、きれいな服を着ることで来ました。夕飯もごちそうになり、とてもおいしかった。

 そんな翌日。

 借りている家を出るとちょうどよくおばさんがいました。


「おや、おはよう」

「あっ、おはようございます」

「眠れたかい」

「はい、ぐっすり眠れました」


 私は傭兵の娘であるから、どんな所でも寝ようと思えば寝れます。もちろん寝起きもかなり良く、ちょっとした気配ですぐに目が覚めるようにはなっていますが、昨晩は朝までぐっすりと眠れました。


「そうかい、それはよかったよ」

「よう、嬢ちゃんおはよう」

「おはようございます」

「昨夜の話は決まったか?」


 昨夜の話というのは、反乱軍に参加しないかという誘いのことです。脱出した際ににも言われたことだけど、昨夜も改めて言われた。でも、昨夜も答えは保留としていた。


「はい、決めました」


 夜寝る前に考えて出した答え。


「私もやっぱり帝国は許せません。でも、反乱軍に参加するのは違う気がして、だからすみませんがお断りします。私は私のやり方で帝国と戦いたいと思います」

「そうか、まぁ嬢ちゃんならそう言うと思っていたよ」


 私の答えに少し残念そうではありますが、予想はしていたみたい。


「すみません。それと、今日のうちにはここを出ていこうと思います」

「おや、もう行くのかい」

「はい、ほんとにお世話になりました」

「いいってことだよ。こっちだってグリーブが世話になったんだから、これぐらいなんてことないよ。それよりあんたはちゃんと生活はできるのかい?」

「はい、それは大丈夫です。幼い頃からそう育てられてますから」

「そうかい、それなら安心だね。でも、無茶はするんじゃないよ」

「はい」


 こうして朝の会話をして、朝食をもらってから少しして村を旅立つことにした。


「気を付けていくんだよ」

「はい、お世話になりました」

「嬢ちゃん、こいつを持っていきな。それより使えるだろう」


 そう言っておじさんが差し出してきたのは剣、鞘から抜いて見せてくれたけど、それは鋼の剣だった。


「鋼、ですか?」

「ああ、昔勝ったものでな。使わずにしまっていたのを昨日鍛冶屋の親父に見てもらったから、問題なく使える」

「えっと、いいんですか?」

「ああ、もらってくれ」

「あ、ありがとうございます」

「おう、いいってことよ」


 私がお礼を言って剣を受け取ると、おじさんが照れてしまった。


「なんだい、いいとしたおじさんが照れてんだい、気持ちの悪い」

「うるせぇ」

「ふふっ、それじゃその、さようなら」

「ああ、さようならさね。元気でやるんだよ」

「じゃぁな」

「無茶すんなよ」


 おじさん、おばさんに門番さんの3人に見送られて私は村を旅立ったのだった。



「さてと、旅立ったのはいいけれど、どうしようかな。とりあえず街を目指したいけれど、あっそうだ。名前変えないといけないよね。アリシアは逃げたことになっているだろうから、使えないし、リーシアを名乗るわけにもいかないし、というかリーシアを私が名乗ったらどう考えてもあの村の出身だってわかるよね」


 私の本名リーシアというのは、私の曾祖母の名前を受け継いだものだったりする。

 曾祖母リーシアは女性でありながら、ありとあらゆる武器を使いこなし、戦場を駆け巡ったという。そして、ここ帝国がまだ王国を名乗っていた際、多くの戦場で戦功をあげて、帝国となった一番の功労者で英雄と云われている。また、曾祖母は絶世の美女だったともいわれていて、帝国内で曾祖母を知らない人はいないとまで言われている。ちなみにだけど、実は私がリーシアの名前を付けられた理由は、生まれた時前世の記憶を持っていたために、全く手のかからない子だったことや、曾祖母の子供である祖父が私を見て、雰囲気などが曾祖母そっくりだと言い出したことで、もしかしたら私が曾祖母の生まれ変わりなのではないかと思ったからだと聞いた。しかも私は曾祖母から才能のすべてを受け継いだらしく、私自身あらゆる武器を使いこなせるし、曾祖母のことを知る祖父世代の人たちから曾祖母に瓜二つだと言われていた。絶世の美女といわれた曾祖母とそっくりといわれても、うれしいけどなんか勘違いじゃないかと思ってしまう。私そんな綺麗じゃないもの。


「なまえ、名前、なまえ、あっそうだ。こういう時に前世の名前を使えばいいんだ。私の前世は牧野莉佐まきのりさだから、そのリサを名乗ればいいのか、リサならこの世界でも特に違和感もないし、よし決めた、私はこれから女傭兵リサで行こう」


 名前が決まったところで、今度は一番の問題を考えていこうと思う。

 それは、お金、今の私はお金がない。旅をしていた時持っていたお金は、捕まったときに帝国に全部奪われてしまったので、今現在の所持金は0、本当に全くない状態。これはさすがにまずい。これでは街にも入れないし、宿にも止まれない。となると、何らかの方法でお金を得る必要がある。


「となると、やっぱり狩りだよね」


 街に入れないから街の仕事もできないので、外でなにか収入減を手に入れる必要ある。そうなってくるとなにか動物、魔物、盗賊などを狩るしかない。最後変なのが混じっていると思うかもしれないけれど、盗賊は人だけど魔物と同じ扱いとなる。だってどこにでもいて、倒しても倒してもどこかからか湧いてくるし、人によってはこの世界にもいるGと呼んでいる存在だ。私はさすがにG呼ばわりはしないけれど、討伐してもいいとは思っている。


「でも、魔物と盗賊は無理かな。装備がこれしかないし」


 魔物や盗賊は狩るにしても戦うしかない、一応剣はあるから戦うことはできるけれど、胸当て(胸に当てる下着)がないので昨日のようにうまく戦えなくなるし、攻撃を受けてしまったらアウトだ。だから、それはせめて胸当てを手に入れてからにしたい。


「そうなると、動物かな。でも小さいのはお金にあまりならないから、ここはちょっと大きい動物がいいな。でも、そうなると剣じゃなくて弓が欲しいか」


 剣を持って動物を追い掛け回すわけにもいかないし、罠を仕掛けることもできない。罠自体はできるんだけど、大きな動物を得るための罠はいろいろ足りない。となると、弓を使って射るのが一番いい方法となる。


「仕方ない、作るか」


 傭兵として育てられた私は、もちろん弓を自作するなんてことは簡単。

 どんな弓を作ろかなぁ。そう思いながらさっそく材料集めをし始めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る