第3話 痛いけれど、脱出できました。
何とか無事にやってきた帝国兵を倒すことができた。おじさんは賞賛してくれたが、私としてはちょっと不満だった。
「……痛いなぁ。やっぱり」
ここ一か月剣もナイフも触っていないためブランクがあり、思うように剣が振るえなかった。そして何より、問題は下着、これは戦闘職の女性ならではの問題だけれど、胸ってちゃんと押さえておかないと動いたり擦れたりで痛い。にもかかわらず今は男性用の服に鎧をつけているだけなので、服の中で胸が激しく動き回ってしまった結果、先端がこすれて痛い。それでなくとも私は16歳にして、Gカップはあるかという大きさなので動きも半端じゃない。また、大きい分服で締め付けられて苦しいし、なのに動くって勘弁してほしい。もう、おとなしくしててって思う。
さて、ここでちょっとこの世界の下着事情についてだけど……あっ、その前に私が今この世界と言ったことと、私がGカップと表現したことについて説明しておく必要があるね。実は私、もう1つ秘密を持っていて、これは両親や村のみんなにも話していないこと。
それは私が前世の記憶を持っているということだ。それもこの世界とは別の世界、地球という星の日本という国に居たという記憶だ。しかも私はそこでは結構頭がよく、進学校に通い、常に成績上位をキープしていた。尤も私としては日々の勉強をちゃんとしていただけなんだけど。また、容姿もそれなりに整っていたみたいで、よく友達に言われていたし、ある国民的アイドルグループに所属しており、センターを務めていた。でも、そんなある日お仕事でバンジージャンプをすることになり、飛んだところひもが切れて落下、下を流れていた川に流されて溺れ死んでしまった。あの時思ったのは、ああ、これであの番組終わったなぁというどうでもいいことだった。あの番組長寿番組で子供ころから見てたからね。そうして気が付いたら傭兵の娘として生まれていたというわけだ。
と、ちょっと脱線したけれど本題、この下着というものは向こうとは全く違う。なんといってもブラジャーというものがない。それではどうやっているのかというと、まず村娘といった普通の子は服を重ね着したり、トップスについているひもを縛ることで固定している。あれってしっかりとした固定ではないから激しく動こうとすると痛い。だから普通の子はめったなことでは激しく動かないから、みんなおしとやかに見える。それで、戦闘職の人はというと、2種類あり、動物や魔物の革を前だけのホルターネックに加工しそれを当てて背中と首でしっかりと固定する。この時しっかりときつく縛らないといけないんだけど、革で固いから激しく動いても問題ない。私もずっとこの方法で固定してきた。そしてもう1つは、金属鎧を胸の形に加工してしまうというものだ。これだと、左右個別に固定されるためにどんなに動いても全く気にならなくなるうえに、私みたいな大きな胸の子でも安心できる。しかし、これは作る際が恥ずかしい、なにせ胸の形そのものにしなけれならないので、どうしても鍛冶師の人に胸を見せなければならないし、サイズまで細かく計測されてしまう。また、恥ずかしい思いをして作ったとしても、それを身に着けると脱がなくても胸の形がまるわかりとなってしまうことだろう。私もこの大きさだからこれにしないかと勧められたけれど、まだこれを作る勇気がない。
最後に貴族女性についてだけれど、彼女たちはコルセットを身に着けている。なんでも貴族女性の間では、胸元を大きく開けて上部を見せることがはやっているらしい。そのためコルセットには胸を持ち上げて豊満に見せつつ形をよく見せるような機能が付いているみたい。まぁ、私には一生縁がない話だけれど。
閑話休題。
「どうした?」
「いえ、なんでも、それより行きましょう」
「おう、そうだな」
胸は痛いけれど、今は我慢してここノーリスを脱出しようと思う。
さっきの帝国兵、って改めて見てみるとこの人、さっき私を処刑台に送った人だ。しかも首を固定するときに踏みつけてきたんだよね。まさかこんな形で再会するとは思はなかった。まぁ、もう死んでいるんだけど。
それはともかく今はここの脱出に集中しなきゃ。
というわけで、開いている扉から部屋の外へと出ていく、外に出るとそこは廊下となっており、その先に地下への階段が見えた。
「あそこから降りられるな、行くぞ」
「はい」
おじさんが先行し階段を警戒しながら降りていくので、私もそれに倣って注意しながら階段を下りる。
そうして、降りること地下1階、ちょっとじめってるけれど我慢して突き進む。
「貴様ら、反乱軍か、どこから入った!」
廊下を歩いていると不意に帝国兵が現れて、おじさんを見てそう叫ぶ。私の恰好は帝国兵と同じものだけれど、おじさんは反乱軍のそれそのままだからね。
今思ったんだけれど、どうして私は捕まった際に身に着けていたものも、道具もお金も全部持っていかれたのに、このおじさんを含む反乱軍の人たちは服と鎧などの装備がそのままなんだろうか。
そんなことを思いつつも、素早く相手の懐に入り込み斬りつける。
「グゴォ」
くぐもった声を出しながら倒れる帝国兵、まさか自分と同じ格好した私から攻撃されると思っていなかったのかな。
「おりゃぁ!」
隣ではおじさんが雄たけびを上げて帝国兵を倒している。というかそんな雄たけびを上げたら、ほかに見つかるじゃん!
案の定、雄たけびを聞きつけた帝国兵が数人扉から出てきてしまった。もう何やってるの、私あんまり戦いたくないんだけど!
動くたびに胸が動いたり擦れたりしてほんと痛いから、最低限にしたい。
「あ、あの、あまり大きな声を出さないでください。敵に気づかれます」
「お、おう、すまねぇ。思わず……気を付けるよ」
なんか言い訳みたいなことを言ってきたので、一睨みするとすぐに了承してくれた。
それからおじさんもおとなしくなり、さらに道を進んでいく。
そうして、さらに地下へ向かっていくと、人工的な壁から天然の洞窟へと出た。
「あともう少しだ、ここを抜ければ外に出られるぞ」
なんでこのおじさんがこんなことまで知っているのかというと、実はこのおじさん以前この街で兵士として配属されていたそうだ。
とまぁ、それはいいとしてようやく外が見えてきた。やったー外に出られるー!
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