第35話

「へぇ。じゃあ、お酒買っておかないとね」

「神棚用か?じゃあ俺の分も買ってくれよ!」

「えぇ…」

「俺は、焼酎が好きだ。米がいい!米!」

「あるかなぁ…」


私は、出店が立ち並ぶ通りを歩いていく。


「酒の匂いがする!」

「…くぅん」


ポン助の耳が、垂れている。

どうやらポン助にとっては、あまり近づきたくない場所のようだ。


「ポン助。先に家、帰ってる?」

「きゅーん」


ポン助は、やだやだというように頭を振り、頭を擦り付けてくる。

一人で帰るのは、嫌らしい。

少しばかり歩いていると、明らかに酔っぱらいの姿が増えてきた。

道で、寝ている人の姿もまた増えてきている。

そんなところで、寝ていて財布とか盗まれたりしないんだろうか…。

と、心配になるが、見て見ぬふりだ。


お酒の出店が立ち並んでおり、様々なお酒が売っている。


「お嬢ちゃん。飲んでくかい?」

「俺飲みたい!俺飲みたい!」

「坊主には、まだ早いなぁー。あと15年したらな!」

「うぅー!!!」


アスランが、地団駄を踏んでいる。

よっぽどお酒が飲みたいらしい。


「大人の姿だったら、いいんだろ!」

「え、ああ、まぁな」

「じゃあ、ちょっと待ってろ!」

「…アスラン。どこ行くの?」

「大人の姿になる。でも、ここで体を変化させたら、騒がれるだろ」

「大人の姿?」


そんなポンポン姿を変えられるもんなのだろうか。

神様だから?


「この姿は、省エネモードなんだよ」

「しょう…えね?」


知らない単語だ。

神様用語だろうか。


「あんまり力入れなくていいから、楽なんだよ。それに俺が大人になると、あんまりにも美形なもんだから、女子が騒いでしかたない…」

「ははは」

「…お前。俺が冗談言ってると思ってるな」

「だって、…アスランが、女子に騒がれるとか…ははは、ないない」

「見てろよ」


そう言って、アスランは物陰に隠れて、ごそごそとし始めた。

待つこと、少し。

私は、ポン助と一緒に座ってぼんやりアスランを待っていた。


「お?お嬢ちゃん。そんなところで、なにやってんだ」

「ぎゃあ!」

「きゅん」


突然、後ろから誰かに抱き着かれて、驚きと若干の恐怖のあまり、体が固まってしまう。

めちゃくちゃお酒臭い!

私が、固まっているのをいいことに、抱き着いてきた男は、私の胸を容赦なく、わし掴むと、そのまま揉んできた。


「ひっ」

「があああうう!!!」

「いってぇええええ!!!」

「ぅぐっ!」


ポン助が、思い切り男の手にかみついた。

男は、あまりの痛みに悲鳴を上げて、私を突き飛ばし、私は思い切り転んでしまった。


「てめえ!このくそ犬!!!」

「がるるるるる!!!」

「ぎゃああああ!!!」


男が、ポン助を蹴り飛ばそうとするものの、男は酔っぱらっているせいで、ふらふらと体を揺らしている。

ポン助は、男の足を俊敏にかわし、代わりに男の靴に思い切り噛り付いている。

またもやポン助の牙が、食い込み、男は、悲鳴を上げている。


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