第34話
「神への信仰はあるが、俺たちの信頼はないってことだ」
「…まぁ、そうだよね…。別にいいけど」
「前向きにいこうぜ」
「…前向きね…強制的に前に向かされてる感はあるけどね」
せっかくここまで来たのに、また戻らないといけないなんて。とんだ無駄足だ。
◇
「はい。あの家は、好きにされて構いません」
「壊しても?」
「はい。どうぞお好きに」
「じゃあ、好きにしますけど…。本当に大丈夫なんですか?あとで、請求来ませんか?」
「請求も何も…。あの家も土地もあなたのものになっておりますので、誰も文句は言いに行きませんよ。これが、所有権です」
そして、一枚の紙を渡される。
これで、一応、あの家と土地は、私たちの物になったらしい。
追い出されるように役所を出ていかされ、まだ納得できない私は、建物を見上げながら、手元の紙を大切にしまった。
「こんな紙一枚で、大丈夫なのかな」
「大丈夫なんだろ。ほら、早く終わっていいじゃないか。さっさと家に帰ろうぜ。さすがに疲れた」
「くぅん」
二人ともお腹が「ぐぅ」と鳴らしている。
私も、さすがに慣れない土地や人たちとの接触で疲れている。
適当に屋台の物を買って、それで済ませよう。
「はぁ~。すごぉ…」
さすがは、ギルドの国。
屋台も活気があって、あちらこちらから声が飛び交い、いい匂いが漂っている。
「魚も肉も、なんでもあるのね…」
この近くに川でもあるのだろうか。
どれも自分の国では見たことがないものばかりだ。
「おい。これ買ってくれ」
「わんわん」
「ちょっと待ってよ…」
魔物を狩るために、ここでは猟犬も多くいるらしい。
おかげで、ポン助用のご飯もすぐに買うことが出来た。
「おいしい?」
「わん!」
ポン助が、がつがつと、おいしそうに食べているのは、鹿肉だ。
栄養豊富で、犬にとってはごちそうらしい。
確かにいつもより、がっついているような気がする。
「俺にも~」
「はいはい」
アスランは、なんにでも興味があるようで、あれこれと頼んでいる。
…神様なのにいいのかしら。こんなに雑食で。
肉も魚もなんでも食べているけど、神様によるのかしら。
「俺は、好き嫌いはしない。…酒も飲めたら言うことなしなんだけどな」
「その姿じゃ無理でしょ」
「…しかたない。家で飲むか」
アスランもお酒飲むんだ…。
そういえば、家の神棚にあったお酒、夜中にこっそり飲んでいたことがあったわ。
「ちょっと!それ、神様用のお酒だから、飲んじゃだめ!ってか、子どもは飲んじゃだめだよ!」
「つまり、俺用だろ?じゃあ、いいじゃないか」
「なんで、アスラン用になるのよ。とにかく飲んじゃダメ!!!」
「俺の酒!!!」
あの後、アスランはしくしくと泣いて大変だったな…。
神様だから、お酒が好きなのか。
アスランが、特別お酒好きなのかな。
「神様は、たいてい酒好きが多いぞ」
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