第33話
「そういえば、自分の家があるのに、家をもらうのか?」
「あの家。少しぼろくなってきてたし、新しいのをもらえるんだったらもらっておきたいじゃない」
元の国にあった私の家は、店ごとアスランが持ち運んでいるが、それでも無料で家がもらえるのであれば、もらっておきたいなぁって。
もし、元の家よりも使い勝手がよさそうだったら、そっちに住みたいし。
それに家が二つあれば、その分、お店を広くできる上に仕事場だって、広くできるだろうから、持っていて損はない。
「お前、ちゃっかりしてんなぁ」
「だてに年食ってませんから」
「わふ」
「ポン助もそう思うよねぇ」
同意というように私のほうに吠えてくれるポン吉の頭をなでる。
あれだけ臭かった部屋から、出たとたん、ルンルン気分で歩いているポン助の姿を見て、笑ってしまった。
どんだけ臭かったのを我慢してたんだろう。
いや、まぁ確かに臭かったんだけどさ。
「ほら。ちんたら歩いてないで、ちゃっちゃか歩いてくださいよ。こっちは、早く帰りたいんですから」
「はーい」
急かしてくる男の声を適当に聞き流しながら、私のために用意された家に妄想を膨らませた。
新品だったら…いや。さすがにそれはないか。
でも、大きくて、とっても可愛い家だったらいいな。
小さくてもいいけど。
「ここです」
「……」
案内されたのは、とんだボロ屋だった。
「え、これ家なんですか?」
「そうですよ。じゃあ、俺の役目、これで終わったんで」
「え、あ、はい。ご苦労様でした…」
屋根は、数か所穴が開いているし、扉は建付けが悪いのか、半分開いている。
「え?これ?…」
「…まあ。そうだよな。あいつらの反応見たら、わかりそうなもんだったが…。よかったじゃないか。自分の家が結局一番ってこった」
「え?そういう問題?」
「くぅん…」
ポン助が私を慰めようとしているのか、もふもふと体を擦り付けてくる。
それをよしよしとなでているうちに、少し気分が落ち着いた。
慣れ親しんだ自分の家が、手元にあるっていうのが大きいんだけど。
これで、これからこの家に住まないといけないって思えば、こんなに落ち着いてなんかいられないだろう。
「よかった…家、持ってきて」
「ほんとにな。持ってきてよかっただろう」
「うん…ほんと…」
この家には、さすがに住めないよなぁ。
「一応、この家好きにしてもいいか聞いてくる」
「そうだな。変に壊して、賠償金求められても面倒だしな」
「私たちって、本当に歓迎されてないんだね…。神託あるのに…」
「ま、それは国それぞれだろうな。ここは、一応神の信仰があるみたいだが」
「これでっ!?」
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