第26話

「……」

「……」

「飽きた」

「そうか」


ずっと走っているポン助には、悪いけど、飽きたものは飽きたのである。

いつまでも続く森の道。

周りを見ても、木。木。木。木。たまに魔物らしき姿が、ちらっと映ったと思えば、また木。木。木…。

これで、飽きるなというほうが、難しい。


「いつ、つく~」

「もうすぐだ」

「いつ、つく~」

「あと、少しだ」

「あと少しって、どれくらい?」

「もうちょっと、……ほら、もうすぐだ」

「疲れた~」

「まったく。普通の人間なら、1ヵ月は、かかるっているのに。こいつは…。お前、こいつの背に乗ってるだけで、疲れるも何もないだろ」

「人間は、ずっと座っていても疲れるんですぅ」

「は~。…おいポン助」

「アスランもポン助呼びでいいの?」

「真名なんか呼べるわけないだろ。ポン助、あとどれくらいだ?こいつが、うるさくてしかたない」

「わん」

「もうすぐ着くってよ」

「さっきも聞いたよ~」



仮眠をしてから、私たちはまた移動を始めた。

夜の森で、ずっと同じところにいるのは、危ないのだと聞かされる。


「お、ついたぞ」

「え?」


森を抜けると、眼前には、大きな塀。

まるで、城だ。


「ここ、ギルド共和国!?」

「そうだ。新天地には、ちょうどいいだろ?」

「いやいや。よく…私の国から、すっっっごく遠いんだよ!?馬車を乗り継いでも1ヵ月はかかるよ」

「だから、そういったじゃねえか。これでも早いほうだって」

「先に言ってよ~」

「言った」

「言ってない」

「わん」


ポン助に服の裾を引っ張られる。

もうそんなのいいから行こうってか。

その通りなので、素直に引っ張られることにする。

門の前まで歩いていくと、衛兵らしき、人物が武器を構えている。


「誰だっ!」

「あ、えっと、旅人です」

「旅人だぁ…?」


じろじろと私たちの恰好を見られる。

うわっ!すごい不審者を見るような目。

…当たり前か。どう見てもこんな深い森を抜けてきたとは、思えないような装備だもの。

しかも連れているのは、子どもに犬が一匹ずつ。

そりゃあ、怪しまれるのも当然だ。


「いや、本当なんです」

「あやしいな。おまえ、何か証拠でもあるのか。ギルド証は」

「ギルド証なんて、持ってません…」

「お前、まさか魔族か」

「なっ、そんな魔族なんかじゃありません!」


どんどん兵士や屈強な冒険者らしき人間が集まってくる。


「ど、どうしよう~」

「俺達は、御前の命でここまで来た」

「御前だと?証拠は」

「ここに世界樹を生やして見せる」

「せ、世界樹だぁ!?わっははっははっははは!!!」


めっちゃ笑われてる!


「ちょ、ちょっと、世界樹を生やすなんて、なんて無茶言うの」

「俺には出来る」

「で、でも苗木なんて持ってきてないじゃない」

「おい、俺が何なのか忘れたのか?」

「わん」


安心しろ、とでもいうようにポン助が、私の足をポンポンと踏んでいる。


「俺は、神様だぞ。そんなこと、造作もないさ」


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