第25話

「アスランって、神様なのに、人間の事情に詳しいんだね。なんで?」

「いやでも入ってくるんだよ。世界各地に生えている俺の分霊が、教えてくれる」

「生えてる?アスランって、世界各地に生えてるの?なにそれ…シュール」


私は、色々な場所にアスランが埋まっている姿を想像してみる。


「…ぶふっ」

「いや、何勘違いしているのか、手に取るようにわかるが、俺の本体は木だぞ」

「…き?」

「人間たちが、名前をつけていたな…お前にも、わかりやすく言えば、世界樹だ」

「せ、世界樹…?ってあの?うちの裏庭に生えてたやつ?なんか、大きい木?」

「お前なぁ。一応、世界樹って世界的に有名ですごい木なんだぞ?お前とかお前が住んでた国のやつらは、「なんか大きな木」みたいな感じで、軽く見ていたが」

「いや、あんまりすごいとは思えなくて…生まれた時からあるし。大きいなぁとは思うけど、別にパワーとか感じないし…」

「それはお前が鈍感なだけだ!…まったくほかの国は、俺の周りは神域だからって、立ち入り禁止になっているところだって多いのによぉ。お前とことは、大違いなんだぜ?」

「立ち入り禁止だったら、どうやって人の話を立ち聞き出来るわけ?」

「俺が守っている範囲の場所であれば、距離なんて関係ない。だから、俺は国中の立ち話、噂話、内緒話に井戸端会議、なんでも聞き放題だ。やることもほかになければ、人間社会のことにも詳しくなるってもんだ」

「木のくせして、俗世に染まってるわけね」

「なんだ、そのいいかた。お前が瘴気で倒れないのも、この俺!がいるからなんだぞ!」

「は?瘴気?…うそ、ここ瘴気の中なのっ?!私、死んじゃうじゃん!」

「だから、俺が浄化してやってんだろうが!…まったく」

「こんなに明るいのに、アスランがそばにいないと死んじゃうなんて、嘘みたいね」


ポン助に乗って、移動をしているためか、魔物の姿が遠くにちらほらと見えるものの、危険な旅をしているという感覚はない。

しかも、瘴気を浄化してくれるアイテムや魔法を張っていないと、すぐに死んでしまう瘴気の中とは、考えられない。

死の霧、といわれているくらいだから、もっと暗い色をしていると思ったが、普段、暮らしている空気と何も変わらない。

むしろ、自然豊かで、清々しい気分になっているくらいだ。


「本当、不思議。ポン助とアスランがいなかったら、私なんて簡単に死んじゃうのにね。全然、そんな感じしない」

「まぁ、瘴気と魔物がいる以外は、普通の森だからな。無理もない。だが、絶対に離れるなよ。特に俺のそば!この中に一人取り残されたら、5分で、死ぬからな」

「5分しか持たないの…人間って虚弱ね…」

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