第21話

「ぎゃあああああ!!!」

「わんわんわんわん」


そのころ、私はポン助の背に乗って、大陸を移動していた。

さて、なぜそんなことになったのかというと、



「疲れた」

「情けないなぁ」

「しかたないでしょ。基本的に座り仕事で、ずっと在宅勤務。散歩はしても、こんな長時間、慣れない道で歩き続けて疲れないほうがおかしいわよ」

「こんなんじゃあ、近くの国に行くまで日が暮れる」

「いや…そんな1日でつくような距離じゃないって」


ぐだぐだぼやきながら、歩いているとポン助が、お座りしてしまった。


「ポン助も疲れちゃったよね~」

「わんわん」

「そうだよね~…て、な、なに!?ぽ、ポン助?」

「わん!」


座り込んだポン助が、いきなり私の足の間に無理やり頭をねじ込ませてきた。


「股開けって」

「言い方…ん、これでいいの?」

「わん」


ポン助は、私の足の間に入り込むと吠えた。

何がしたいのやら。


「どうやら背に乗せてくれるらしいぞ。よかったな。飼い主以外は絶対に背に乗せないって言われているのに。ずいぶんとなつかれてるな」

「背に乗せる?」


この可愛いポン助が?

ははっ。むりむり。

いくら大きくても人を乗せて、移動できるなんて、馬や牛くらいの大きさじゃないと無理だ。

私が情けなくも「疲れた~」と弱音を吐いていたから、優しいポン助は気を使ったのだろう。人の言葉を理解できると言ってたし、その言葉は嘘じゃないのだろう。


「気持ちはうれしい…え」


ポン助が、光り輝いている。

そして、むくむくと足が太くなり、体がどんどん膨らんでいく。


「は?」


真っ白な体には、金色の模様が浮き出てきている。

体も神々しい光に包まれており、まるで神様みたいだ。


「いや。神様だったわ」

「正確には、神様の眷属だがな」

「どっちにしても恐れ多いこと、この上ない」

「背中に乗っておいて、よく言うぜ」

「ってか、いつの間に乗ってたの」

「許可なければ、人間が背に乗るなんざ不敬罪もんだぜ。もう少し感動してもいいんだぜ」

「なんで、あなたが偉そうなのよ…ポン助。本当は、私が関わっていい存在じゃなかったのね…」

「ウ゛ウ゛ッ」

「え?なんか怒ってる。…やっぱり背中に乗るのまずい?」

「いや。助けてくれた恩人に、そんなこと言われてショックなのさ」

「助けたっていうか、ご飯あげただけなんだけど」

「最近の人間は、神様に茶碗一杯のごはんすらあげるのをためらうやつの、多いこと。おまけにお前がいた国は、俺たちより、よほど邪神がお気に入りらしい。おかげで、俺達の存在は、まるで空気だったんだぜ。神様は寛容っていうが、さすがに忘れられていい気はしないもんだ…」

「ん?」


アスランの言葉に私は首をかしげる。

色々とすごいことを言っていなかったか?

邪神とか、なんとか。


「アスラン。私たちが住んでいた国って、邪神なんて崇拝していないと思うけど。むしろ、あそこの国は、どこよりも神様を敬わない国とまで言われているのよ」

「でも、お守りは買ってるじゃないか」

「お守り…え?」

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