第20話

「世界樹の葉が、落ちてきている?それがどうかしたのか?」


国の王だというのに、この言葉。

家臣の一人が思わず、といった様子で、頭を抱えている。

椅子に座っている若き王は、勉学が得意ではなかった。特に歴史が苦手だったと聞く。だからこそ、家臣たちの言葉もろくに聞かず、世界樹の保護や警備に国の金を使うべきだと、何度進めても決して、首を縦に振らなかった。

その結果が、これである。


「葉が落ちているのであれば、好都合。あの葉は、とても高く売れると聞く。どこぞの国にでも渡せばいいんじゃないか?」

「そういう問題ではないのです。世界樹が、枯れてきていると言っているのです」

「ほう。そうか」


…それで?それが、何の問題なんだ?

などという顔をしている我が国の王の愚かさに、今まで甘やかし、放任主義という言葉で、適当に育てられた人間を玉座に据えることが、どういうことなのか、その結果がこれだ。


「今すぐに枯れるというわけではないのだろう?」

「一応、研究者たちの間では、そういわれております」

「なら、大丈夫なのではないか」

「ですが、魔物たちの力もここ最近上がってきているという話もございます」

「ならば、冒険者たちを雇えばいい。世界樹の葉のおかげで、我が国の財政は安定している。力ある冒険者など、いくらでもう雇えるであろう」

「その葉が、もう取れなくなるかもしれないのです…!」

「そうなのか」


のんびりとした声色から、焦りはまったく感じられない。周りだけが騒いでいてもこの調子。


「ならば、聖女殿を呼べばいいんじゃないのか」

「… … …来てくれる方が、いらっしゃるのであれば、よいのですが」


数年前、世界中を巡回しているという聖女御一行に対して、こちらがしたことと言えば、「神様なんて、いるのかも分からないものを信じている愚かな女」「皆が見えていないのであれば、それはいないのと同じ。だから、お前は気狂い女だ」「教会を作りたいなど、どうせ金儲けのために作りたいだけだろう。そんなことは、分かっている」などと、失礼な言葉と態度を国総出で、とったのだ。

その噂は、あっという間にほかの国に伝わったと聞くし、喜んでこの国に訪れる聖女がいれば、まさしく聖女であろう。


「まぁ。まだ世界樹が枯れたわけではないし…そうだ」


いいことを思いついた。

そういって、顔を上げた王の提案で、今までよかったことは一度もない。


「あのお守り屋で、破邪守りを買えばいい」

「お守り屋…ですか」


この国で、一つしかなかったお守り屋のお守りが偽物だったと新聞をにぎわしていたのは、つい最近のことである。

そういえば、世界樹のそばでやっていたあのお守り屋は、今、どうなっているのだろうか。

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