第16話

「ポン助も神様なの?」

「眷属だ。使いみたいな感じだな。でも、こいつは色々と自由にやってるほうだし、力もある。頼っていいと思うぞ」

「ポン助」

「わふ」


ポン助が、神様の使い。

酒に酔っぱらったときに、「うわぁ。もちもちだねぇ。ポン助もちもちぃ」「…」とほっぺをモチモチ引っ張って、遊んでいたポン助が、神様の使い。

ご主人に怒られそうだ。


「…もしかして、ポン助も…喋れたりするの?」

「わん」

「しゃべらねぇよ。犬だぞ」

「でも、神様の使いなんでしょ?」

「こいつは、喋らねぇ。でも、こっちの言葉は通じてる」

「なるほど。道理で」


人の言葉を理解しているような行動をとると思ったら、本当に理解していたのか。

賢い犬だと思っていたら、賢いどころの騒ぎじゃなかった。


「で、ここに神様と眷属がいるわけだ。たいていのことは、できるぜ。何をする?」

「…旅とか」

「旅ぃ?」

「この国を抜けたいの。でも、外には、魔物がいるでしょう。だから、冒険者を雇おうと思ったら、断られちゃって。アスランとポン助って、強いの」

「強いも何もこいつなんか、戦いが本業だぜ」


こいつとは、ポン助のことだ。


「わん」


どこか誇らしげに胸を張っているポン助の本業が、戦闘?

本当に。むふー。と、どこかどや顔に見えるが、あれだけ食っちゃ寝して、ゴロゴロしているポン助が?本当に大丈夫かしら…。


「こんなにお腹ポンポンなのにねぇ…」

「わふ?!」

「こいつは、怠け者なんだよ。まぁ、世話になってたんだ。こいつだって、力を貸してくれるさ。な?」

「わんわん」

「頼りにしていいんだか」

「俺のことも頼りにしていいぜ」

「はぁ…」


見た目は、完全に子どもと犬だ。

頼りにしろと言われても…。

頼りにするしかないんだけど…。


「うん。じゃあ、まずは装備を買い揃えないと」

「そんなの別に必要なくね?」

「いやいや。何言ってんの。遠くまで旅するんだよ?そうしたら、いるでしょ。靴とか、着替えとか」

「別に強化魔法かけるし。着替えは、この家にあるからいいだろ」

「いやいや…それこそ何言ってるの。家にはあるけど、もっていかなきゃいけないでしょ」


何言ってるんだ。この子は。


「だから、家を持っていけばいいじゃんか」

「は?」


何言ってんだ。この子は。


「家を持っていく?どうやって?」

「こう、俺が…もうしまっていいのか?」

「あ、いや。待って。旅に出るときでいいよ。…ええ。本当に持っていけるの?」

「ああ。神様だからな」

「ええ…すごいな。神様」


家を持っていけるのだとしたら、確かにそれに越したことはない。

お守りを作る道具や仕事部屋が、丸々持っていけるとなると、どこでも仕事ができる。

これは、とてもありがたい。


「これなら、出先で、お守りを作ることも可能ね」


むしろ、そのほうがいいのかもしれない。

知る人ぞ、知る。

お守り屋。

これなら、誰かに訴えられることもない。

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