第15話
じっと見つめあうこと数秒。
「俺は、神様だ」
「いや、そんなキメ顔で、もう一度言わなくていいよ」
私のリアクションが、気に食わなかったらしい。
きりっと表情を作りなおして、もう一度、言ったが、違う、そうじゃない。
「神様って、どういうこと?」
「だから、神様なんだって」
「意味が分からない」
むぅ。と膨れている顔は、かわいいが、こんな子どもが神様?
でも、確かにほかの人には、見えていないのだから…え。神様?本当に?
「もしかして、何かのどっきり?」
「んなわけないだろ。俺は、お前を助けにきたんだ」
「助けに?なにから?」
「この現状からだ!」
「はぁ…」
「む。信じてないのか」
「いや。まぁ、いきなり神様がやってきて、お前を助けにきたって言われたら、誰でもこんな反応になりますよね…」
いい年した大人が、神様が助けに来てくれた!ヤッター!みたいな反応をしたら、逆に怖いだろ…。
「とりあえず、逃げましょうか」
人が吹き飛んだ。それも私の恋人だった男が。
それで変に勘繰られても、怖い。
混乱している今、逃げ出すのが、吉だろう。
下手に騒がれて、魔女裁判に引っ張り出されたら、たまったものではない。
そそくさと、私は自称神様を抱き上げて、その場を去った。
◇
「アスランという名前に聞き覚えは?」
―めちゃくちゃある。
「… … …私の家が崇めている神様の名前」
「そうだ。それが俺だ」
「まさか」
「本当だ」
ええ。こんなちまっこい子どもが、神様…?
本当に?
「実は、大きくなれる…とか」
「なんだ。成人男性姿がいいのか?このぷりちーな姿は、お気に召さないのか?」
「…いや。やっぱりこのままの姿でいい」
成人男性の姿で、この言動は少しきつい。
おもに私の精神的苦痛が。
可愛い子どもの姿だからこそ、別になんとも思わないのであって、成人男性の姿で、これはきつい。あと、見知らぬ成人男性(中身は同じだとしても)と終始一緒にいるというのは、少し気まずい。すでに見慣れた子どもの姿のほうが、気安い。
…神様に気安いと思ってしまうのは、いけないことなんだろうけど。
「というわけでよろしくな」
「はぁ…?」
納得してない私の顔をにやにやしながら、見ているアスランは、ふいに、ソファでゴロゴロと寝そべっているポン助を指さすと、
「あと、ついでにあそこでゴロゴロしている犬もどきも、神に近しい力を持っている眷属だぞ」
「はぇ…ポン助が?」
「わん」
ポン助と名前を呼ばれたと思ったのか、はたまた自分の話題だと気づいたのか、とことことやってきた。
どう見ても大きな犬にしか見えない。若干、顔つきが凛々しいな、とは思うけど。
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