第14話
「あなたのお母さんは?頼めないの?」
「いや、お前がやればいい話だろ」
「赤の他人である私が、やる意味がわからない。それより、もっと適任者がいるじゃない。あれだけ世話を焼いていたんだもの。あなたの世話なら、喜んでするでしょ」
「誰だよ、それ」
「だから、あなたのお母さんよ」
一人息子だからと、幼いころから溺愛されている様子をずっと見てきた。
いつまでたっても自立しない息子が、可愛いくて、しかたがないようだった。
この男が頼み込めば、きっと喜んできてくれるのではないだろうか。
「むり」
「なんでよ」
「母さん、腰やっちゃって…。それに父さんが、いつまでも母さんに頼るなって、怒られた」
「なにそれ」
子どもか?
しみじみと目の前の男を見る。
まぁ、こんな男に育ってしまった原因の一つに私も含まれるかもしれないけど。
「しかたないなぁ」そう言って、私もよく彼の家の家事を引き受けていたから。
「とにかく自分で、なんとかできないなら家事代行でも雇ったら?金はあるんでしょ?」
「でも、お前に頼めばタダじゃん」
「は?」
「ずっと、やってきたお前ならわかるだろ。それに俺たち、ずっと小さいころから、一緒だっただろ。家族みたいなもんじゃん。家族なら、助け合うもんだろ」
私に頼めば、タダ?
… ふざけんな。
それは、お前が、私の恋人だったからだ。
将来、夫になる男だったからだ。
それなのに、してもらって当然みたいな顔されるのは、まじでむかつく。
確かに小さいころから、ずっと一緒にいるから、家族みたいなものだったのかもしれない。でも、あのとき、私が弱っていたとき、助けてほしかったときに助けてくれなかったくせに都合がいい時だけ、家族面?
ふざけんな!
「この、」
「まだ終わらないのか?」
―ビュウ!
「へ」
突風が吹いたかと思えば、目の前に立っていた男が消えた。
私も吹き飛ばされているロナルドも周りの人たちも目を点にしている。
人が吹っ飛んでる!
漫画みたいな光景に、ぽかんと呆けるしか出来ない。
「これでよし」
一仕事終えました!
みたいなさわやかな顔してるけど、殺人だぞ!
「さ、帰るか!」
「ろ、ろっろろろろなるど!!!え?ロナルド、空に浮いて…」
「邪魔だったから吹き飛ばしただけだ」
「ふ、吹き飛ばしちゃダメだよ!?」
「そうなのか?」
「そうだよ!人は、吹き飛ばすものじゃありません!ど、どうしよう…ロナルド、死…、え?殺人!?」
「ああ。大丈夫だ。そのへんに適当に落としとく。…丁寧にな」
にや。
そう笑う子どもの顔は、どこか恐ろしい。
「き、君、何者なの?」
「む?言ってなかったか?」
こほん、と息を一つ。
「俺は、神様だ」
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