第12話

「… … …え?引き受けられない?」

「はい」

「ど、どういうことですか?お金なら、お支払いいたします」

「あなたには、少し悪い噂が立っておりますので、皆さん任務を引き受けてくださらないのです。ギルドは、実力はもちろん、周囲の評価や噂も大事にしておりますから。詐欺師の手伝いをしたと噂されたら、こちらも信用問題になります」

「そ、そんな…。私、でも、この国を出なくてはいけないんです」

「それは、あなたの問題ですので、あなたで解決してください」

「そんな…」


まさか、詐欺として訴えられたことが、ここでも問題になるとは…。


「それと、これはお返しします」

「私のお守り…」

「詐欺師のお守りは、つけられないと言われ、商品価値がなくなりましたので」

「… … …」


私の店は、ギルドに少しのお守りを卸している。

それは、ギルドが設立された時からしているから、それこそギルドの人間ならば、私のお守りが偽物じゃないと信じてくれていると思っていたのに。

大量に渡されたお守りをもって、途方にくれる。

この国からも出られない。

収入もない。


「はぁ…」


家に帰り、ベッドに倒れこむ。

詰んだ。

人生。

さすがに魔物がうようよといる国の外に生身で行けるほどの無謀さは持ち合わせていない。

かといって、このままこの国にいても精神的に死んでしまう。


「どうしたんだ?」

「ワン」


とことこ、とやってきたのは、この前の子どもーアスランとポン助だ。

あの後、嫌がるアスランを無理やり引きずって、警察に連れて行った。しかし、捜索願いが出されているどころか、アスランの姿を私以外の人間に見えないということが判明してしまった。



「ですから、ここに子どもがいるじゃないですか」

「はぁ。いい加減にしろ!」


体格のいい男の人に怒鳴られて、私は、驚きと少しの恐怖で固まってしまう。

私が、固まっていることは、お構いなしに警察は、「こっちも暇じゃないだ!」と怒鳴ると、野良ネコでも追い払うように追い出されてしまった。


「… … …え?」

「だから、言っただろう。探している人間など誰もいないと」

「え?だって、…え?」

「俺は、人間じゃない」

「まさかの?」

「幽霊でもないぞ!俺は神様だ!」


―ドーン!


と、後ろに効果音をつけて、どや顔で、胸を張るアスランを無視して、私は道行く人に声をかけた。


「あ。あの、ここに子どもが見えませんか?かわいい男の子なんですけど」

「… … …」


道行く人は、危ない人を見ないように(ここでいう危ない人というのは、私のことである。悲しいことに)視線を合わせないようにするもの。気の毒そうに見てくる人、よくわからない笑みを浮かべながら、足早に立ち去るもの。

結果として、わかったのは、私以外に誰もアスランの姿を見たものはいないということだ。


「もうやめとけ。ただの痛い人間にしか見えないぞ」

「うう」

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