第11話

「お父さん。おじいちゃん」


墓石を見つめていると、朝の裁判や恋人の言葉を思い出し、悲しみや悔しさがこみあげてきて、思わず泣いてしまった。


「うっ…」


ぼたぼたと、涙があふれて止まらない。

あんな人たちに、私は負けてしまったのが、悔しい。自分の力不足が悔しい。今まで、おじいちゃんやお父さんのお守りを買ってくれた人たちは、喜んでくれていたのに。私のお守りは、力不足だったことが、悔しい。

悔しい。悔しい。苦しい。


「う、…ごめんね。お店もしかしたら、続けられないかもしれない」


少なくともこの国では、もうやっていけないだろう。

隣の国にでも行こうか。

もしくは、教会がある帝国にでも行った方がいいのかもしれない。

しかし、帝国は遠い。

港まで行かないといけないし、そこに行くまでに魔物を倒さないといけない。

まずは、ギルドに行って冒険者の人たちを用心棒に雇って…。


そうやって、考えているうちに思考が切り替わっていく。

さっきまでの悔し涙は、どこへやら。

今では、すっかりお金の心配とこれから先、どうしようか、と考えしかなかった。

元々、切り替わりが早いのだ。

長所でもあり、短所でもある。


「お金足りるかなぁ…」


冒険者は、ランクが上になればなるほど、料金も高くなる。

ただでさえ、冒険者は、雇うとなると、割高なのに。

魔物との戦いなどで、命がかかっているので、仕方がないのだが。


「仕方ない。これも必要経費よね」


生まれ育った国を出るのは、少し怖い。

まぁ、なんとかなるだろう。


「うん。お父さん。おじいちゃん。見守っててね。私、きちんとやってみせるから」


くよくよ悩んで、苦しんでもなにも変わらない。

まだまだ私は、元気なようだ。

よかった。

これで、また前を見て歩ける。

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