第9話

あの後、しかたないので、朝まで子どもが起きるまで待つことにした。

孤児院の子どもだった場合、探索願いが出されているかもしれない。かもしれないが、子の子どもの状態を見ても、良い環境にいたとは、とても思えない。

なので、子どもが起きたときに話を聞いてから、考えようと思ったのだ。

あの裁判の後だから、私にはあまりよくない噂が流れている。そのうえで、見知らぬ子どもをかくまうのは、我ながら危険なことなのかもしれない。もしかしたら、今度は誘拐犯扱いされる可能性もある。

そうしたら、今度は、本格的に店をたたまないといけないことになる。それは、避けたい。避けたいはずなのに…。私は、こうやって子どもを起こせずにいるままだ。


じいっと子どもを見つめる。

こうやって見るとなかなか整った顔立ちをしているようにも見える。

起きたら、お風呂に入れないとなぁ。

服もこのままじゃダメだろう。衛生的に。


「なんかあったかなぁ…」


がさごそとタンスをひっくり返す。

捨てたと思っていたが、こうしてみると割と残っているものだ。

洗濯し過ぎて、縮んでしまった服もあるし、とにかくこの子が着ている服が渇くまでの急ごしらえには、なりそうだ。


「む、うぅう…」


寝苦しそうにソファの上で寝転がる子ども。

仕方ない。

今日は、私のベッドを貸してあげようじゃないか。

そう思い、子どもを抱き上げようとした時だった。


―カリカリカリ。


扉を引っかく聞きなれた音に私は、立ち上がる。


「今度は、客人か…」


今日は、色々な縁があるようだ。

扉を開けると、真っ白な犬が行儀よく座っている。

名前は、ポン助。命名私。由来は、お腹がポンポンするまで、食べる食いしん坊だからだ。

おそらく誰かの飼い犬だろうと思われる。毛並みは美しく、乱れたところは見たことがない。名前もおそらく違うだろうに、私がポン助と呼ぶと、律儀にやって来る可愛い子だ。ちなみに男の子。

ポン助は、大人しく私に肉球をふかれている。

ふんふん。と不思議そうに子どもがいる方向に鼻を動かしている。やっぱりわかるか。


「そういえば、君もお腹をすかせて倒れていたね」

「くぅん」


そうだ。この子もお腹を空かせて倒れていたところを見つけた私が、ご飯をあげたんだった。

あの時は、やけに立派な犬が倒れ込んでいると驚いた。

私が持っていたパンを食べようとしたところから、お腹がすいていることに気が付いたのだ。犬用の餌など持っていない私は、急いで町まで戻り、餌を買ってきて、この子に与えたのだった。


「君のご飯を買ってくるから、ここにいるんだよ」

「わん」


犬に話しかけても意味が通じるわけがないのだが、あの後、律儀に待っていたから、この子はもしかしたら、ある程度の言葉は分かるのかしら。と思ってしまったのも無理はない。

そうして、私が買ってきた餌をあっという間に食べたかと思うと、すぐにどっかに行ってしまった犬を見て、もうこれきりと思ったのに、また会った時は驚いた。

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