第3話

「縁結びのお守りって、よく勘違いされやすいのですが、縁を結んでくれるのは人であるとは、限らないんです。仕事だとか、お店だとか、その人に必要だったりする場所や仕事の縁も結んでくれるのが、縁結びのお守りなんです」

「じゃあ、騙したんですか」

「だから、私は、縁結びのお守りは、理想の相手だけと縁を結んでくれるわけではなありませんって、説明したじゃありませんか」

「詐欺だ!」

「いや、ですから…」

「詐欺師だ!こいつは詐欺師だ!!!」

「そもそもあなた、お守りを買ってから具体的に行動はしましたか」

「行動?こっちは、そんなのしなくてもいいようにお守りを買ったんだよ!」

「いやいやいや…そんな理想の彼氏が、家にいてポンて出てくるわけないんじゃないですか。魔法じゃないんですから。お守りというのは、あくまで、身につけている人の助けをしてくれるんです。なにもしなかったら、さすがにお守りを持っていても変わらないですよ」

「それは、あんたのお守りが、にせものだからだ!この詐欺女!訴えてやる」

「今、訴えられてます」


なんなんだ。この人。言葉が通じないにもほどがある。


「ポストとかご覧になりましたか?」

「外に出ないのにポストなんか見るわけないだろ」


この人、なんでこんなに偉そうなんだろう…。

うーん…。これで、私のお守りが偽物扱いされるのは、納得いかない。


「それで、私のところで買ったお守りは、どうされましたか」

「捨てた」

「す、捨てた!?」

「当たり前だろ。いつまでも偽物持ってるわけないじゃん」

「あのですね。一応、不要になった際に私のところに返してくださいとお伝えしましたよね」

「なんで、わざわざあんたのところまで行かなくちゃいけないの?あんたが来いよ」

「ええ… …」

「で、私はあんたのところのを捨てた後、ここでお守りを買ったんだ。そしたら、彼氏が出来たんだよ。だから、やっぱりここのおっさんのは本物なんだ」

「はい。ありがとうございます」


おっさんと呼ばれたおっさんは、おっさん呼ばわりが気に喰わないのが、口や目がぴくぴくと痙攣している。まさか、この人、自分のことまだお兄さんと呼ばれる年齢だと思っているのだろうか。

いや、そんなことより、


「彼氏が出来た…?でも、貴方は家にずっといるんですよね?」

「そう。だけど、家に彼氏が来た?」

「家に彼氏が来た?… …?もともと、彼氏がいらっしゃったんですか?」

「いねぇよ!馬鹿かあんたは!頭おかしいの?さっきから、彼氏が出来たって言ってんじゃん!馬鹿か!」

「す、すみません…」


帰りてぇ~~~。

でも、家に彼氏が来たってどういうこと?

彼氏が出来た?

つまり、見知らぬ赤の男が家に訪ねてきて、その人が彼氏になったってこと?

いや、さすがにそれはないだろう。

怪しすぎる。

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