第25話 妻からの手紙

すっかりご馳走になり、次の日の朝、妻の叔母の家をあとにすることになった。

帰り間際に叔母から

「由里ちゃんと喧嘩でもしたの?亡くなる一週間くらい前だったかな、由里ちゃんから、突然こっちに住んでもいい?なんて電話があったから」

妻は私と離婚をして、ここに移り住むつもりだったようだ。


「お邪魔しました。」

「いいえ、また来てくださいね」と叔母は手を振り、健二の車で駅まで送ってもらった。

叔母から話を聞いて、少しだけ自信を取り戻し、勇気をもって帰りの新幹線の中で、妻からの手紙を読むことにした。

深呼吸をして手紙を開いた。


聡志くんへ

本当はちゃんと向き合って話さなきゃならないことなんだけど、うまく話せる自信がないから手紙を書きます。


聡志くんに謝らなければならないことがあります。

私は、聡志くん以外の人と関係を持ってしまいました。謝って許してもらえるとは思ってないけど、このまま黙っておくことはできないから、本当の事を書きます。


その人は以前に仕事を一緒にした人で、偶然再会したときに私は酔っていて、気がつくとホテルの部屋にいて、抵抗したけど抗いきれなかった。

本当にごめんなさい。


知らない間に動画も撮られていて、聡志くんにバラされたくないなら関係を続けるように脅かされて、何度も関係を持ってしまいました。

例え脅かされていたとしても、してはいけないことをしてしまいました。

私は最低な人間です。


それから、もう一つ、子供のことだけど、私は赤ちゃんが産めない身体みたい。本当は聡志くんとの赤ちゃんを産んで、大きくなったら一緒にキャッチボールをしたかった。

聡志くんも義父さんとしたって言ってたけど、私も亡くなった父とキャッチボールしたんだよ。

でもそれは叶わない夢のようです。


だから、私と別れて、今度は若くて健康な人と再婚して子供をつくって、夢だったキャッチボールをしてください。


聡志くん

私は聡志くんと出会えて本当に幸せでした。

聡志くんと一緒に行った場所とか一緒に見た映画とか全部覚えてる。

どれも私にとっては宝物ような思い出です。

一生忘れません。

聡志くんとは一緒に生きていくことができないけど、聡志くんの幸せを心からお祈りしてます。


部長さんへの昇進のお祝いのときに、こんな話でごめんなさい。


由里


私は嗚咽がこみ上げてくるのを必死に堪えた。

妻に不倫のことを正直に打ち明けられたとしても、すぐに受け入れられたかどうかは自信がない。

だが、今なら言える、「由里ちゃん、君がいれば他には何も要らない」と。

妻に会いたい、由里ちゃんに会いたい。

会って抱き締めて、もう一度一からやり直したい。

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