第21話 全てを知って

私はマーくんこと堺を睨み付けていた。

それに臆することなく堺は、身勝手な話を始めた。

妻と堺は7年前に協力会社として同じプロジェクトで仕事をしていて、そこで堺は由里に惚れた。

何度もアプローチしたが、相手にはされなかった。それどころか、当時、由里と付き合って須藤が追い払い、堺が働いていた会社にも訴えたらしい。

そのせいで、堺は会社に居ずらくなり、会社を辞め転職し、堺の妻と知り合い結婚をした。

初めは結婚生活も上手くいっていたが、子供が生まれると堺の妻は子供に掛かりきりになった。子供が病気がちであったこともあり、堺の妻はちょくちょく実家に帰るようになった。

そんな生活に、堺は不満を感じるようになった。その原因は全て、由里が堺を相手にしなかったことだと考えるようになり、由里への思いを再燃させ、探偵を使って動向を調べさせた。

由里は私が出張中に1人で飲みに行くことを突き止め、由里がよく行くバーで待ち伏せをした。

妻が酔ったのを確認すると近づき、帰るという由里を無理やり引き留め、一杯だけといい、わざと強い酒を飲ませ泥酔させ、ホテルに連れ込んだ。

そしてあの動画を撮り由里を脅した。

由里が拒むと、私の会社や私の実家までを探偵を使い調べさせ、動画を送りつけると言い、脅しをエスカレートさせていった。


堺の実家は岐阜にある有名な酒造メーカーで、堺はそこの跡取りだったが、田舎暮らしが嫌になり勉強と称して東京にでた。その間も実家から援助を受けていた。

いずれは、今の妻と別れ、由里と再婚をし、実家の跡を継げばいいと考えていたようだが、

妻からは、由里との不倫の事実をつき止められ、慰謝料と養育費を要求された。

困った堺は実家に泣きついたが、実家からは弟に跡を継がせ、堺とは縁を切ると言われたそうだ。

それまでも、堺は手に入らない女には、ストーカーまがいの行為を行い、何度も訴えられ、それを実家が尻拭いをしてきた。

とうとう実家からも見放されて、私にまで訴えされたら、ますます苦しくなると思い、訴えないで欲しいと私に懇願してきた。

「僕も辛いんですよ。分かってくださいよ」と言い、「奥さん亡くなったんだから、もういいでしょ?」と人を馬鹿にした言い方をした瞬間、私は堺に殴りかかっていた。

こんな男に、こんな男に妻が苦しめられていたかと思うと許せなかった。

周りから悲鳴が聞こえたが無視して、何度も堺を殴った。

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