第17話 親友を訪ねて

妻の親友の神崎美佳を訪ね、京都まで来ていた。


妻の親友は、明るい表情だが少し寂しそうに妻との思い出話を語り始めた。

妻と美佳は、同じ東京の私立大学付属高校に通っていた。

「仲良くなったのは高3から。うちの高校、内部進学が殆どだったけど、私も由里も外部進学狙ってて、図書室で勉強してたとき、よく見かけるようになってね、私は理系で由里は文系、クラスも違ったけど、少しずつ話すようになって段々に仲良くなったの。

で、由里は見事、第一志望の国立大に合格して、私は国立はダメで、私立の2部に入ったわ。

私達、同じタイミングで親の会社が倒産して、奨学金での進学だから、なるべく学費の安いところを狙ってたんだ。そんなところも同じで共感しあってたわ。」


高校卒業してからも妻と美佳は頻繁に会っていたようだ。一緒に食事に行ったり、旅行にも行っていたそうだ。

「私達、2人とも結婚が遅かったから2人でよく愚痴ってた」と笑い「逆に仕事はどんどん忙しくなったけど、年末には慰労会として、高級旅館に泊まるのが恒例になってた」と楽しそうに語ってくれた。

美佳はもともとSEとして大手企業に在籍した。そこで京都から転勤してきた夫と知り合い、夫が京都に戻るときに一緒に移住し、念願だった輸入家具の店を始めたそうだ。


私は聞きたかったことを質問してみた。義母と妻の関係についてだ。

美佳は顔色を変え、話し辛そうにしていた。それでも私の懇願に応えるように話してくれた。


義母は浪費癖があり、男にもだらしがないそうだ。

「男の人ができると、貢いだり貢がせたり、いないときは、急に由里に依存してたみたい。」

妻から実家に帰ることは殆どなかったが、反対に義母は頻繁に来たかと思うと、急に来なくなったりしていた。妻が有名国立大出身なことも、大手商社で管理職に就いていたことも義母から聞いた話だ。その話で事情が読めた。


「たまには、まともな人もいたみたいだけど、殆どがお金にだらしない人で、由里が上司の愛人にならざるを得なかったときも、結局はお母さんが男の人に騙されたことが原因だから」

それでも懲りずに義母は男に貢ごうとしてたときに、妻がキレて不倫の事実を突きつけた。義母は自分のことは棚にあげ、須藤を糾弾した。

「由里ね、会社は辞めることになったけど、ホッとしたって言ってた。まだその人への借金残ってたけどチャラになったって、笑ってた。」


「その後に学生時代からの友達の弁護士がいろいろと手を尽くしてくれて、持ち家も由里名義に変えて、お母さんが借金をできないようにしてもらったみたい。」

恐らく奥野のことだろう。奥野は私と話したときは、そのことには一切触れなかった。


妻は本当は家をでたがっていたようだが、義母を監視するために、結婚するまで家を出なかったそうだ。


「でも一番はお父さんのことかな。お父さん自殺しちゃったじゃない、その原因がお母さんじゃないかって思ってたみたいだから」

私が驚いた顔をしていると

「やっぱり言えてなかったんだ。由里、このこと話すと思いだして涙が止まらなくなるから話せないって言ってた。」

妻は私には心を許してくれてなかったようだ。それは、私にとっては不倫していたことと同じくらいショックなことだ。 


妻の父は、小さな工場を経営していた。だが不況の煽りを受けて経営は風前の灯だった。そこに義父の急死が重なり、工場は倒産したと聞いていた。

それは表向きな理由で、本当は、義父は借金を苦に自殺した。妻はその借金の原因が義母にあるのではないかと疑っていたらしい。

「確証はなかったみたいだけど、お母さん、派手好きで浪費癖があったし、お父さんがなくなる前から愛人がいたんじゃないかって、由里は思ってたみたい。」


倹約家なのも、派手なところがないのにも、理由があった。

妻は苦労したんだな。

どうして私には打ち明けてくれなかったのだろう。苦労知らずの私では頼りなかったということなのか。


そして、もう1つ聞きたかったことを聞いてみた。宮部とのことだ。

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