第14話 新たな事実と疑問

妻が以前勤めていた大手商社の同期だった、斉藤早苗が妻の焼香のために、我が家を訪れていた。

妻は借金を肩代わりしてもらう代わりに須藤と愛人関係にあった。

その事実を斉藤から聞かされた。

妻が借金?!。倹約家の妻からは想像もつかなかった。

「佐々木のお母さん、投資詐欺に引っ掛かったみたいで、知らない間に佐々木が連帯保証人になってたって。貯金とかお金に代わるものは売り飛ばして返済したみたいだけど、足りなくて、残りを須藤が肩代わりしたの。

でも、結局その不倫の事をお母さんが気づいて、会社に乗り込んできて、関係が明るみになった。

それが原因で佐々木は会社を辞めることになった。」

義母ならば遣りかねないと思った。

妻と違い、ズケズケと物を言うところがあるし、身勝手な一面もある。

そんな義母を妻はどこか避けているようなところがあった。

以前、妻が妊娠したときに、妻も安心だろうと義母との同居を提案してみたが、妻は頑なに拒んだ。

そういう事情があったのか。


妻が須藤に惚れていたわけではないと知ってホッとした。

マーくんとのことも、何か事情があったのかもしれないと、そんな希望にも近い思いを抱くことになった。


同時に前からあった違和感を思い出した。

妻の携帯だ。もう一度確かめてみると、マーくんとのLINEは妻が亡くなった日の履歴しかなかった。マーくんの話だと、妻とマーくんは3カ月前からの付き合いだ。それなのになぜ、その日だけなのか。


他にも何か見落としてることはないかと、妻の所持品をあさることにした。

妻が気に入ってたドレッサーの引き出しを開けると、下の方からタブレットが出てきた。

妻がタブレットを持っていたとは知らなかった。

当然、ロックがかかっており、いくつか心当たりの暗証番号を試したがロックは解除されなかった。


他には何かないかと、妻が亡くなった日に持っていたカバンと紙袋2つを開けてみることにした。

紙袋は大きいのと小さなのがあり、それぞれ当日どこかで買い物した袋だと思われた。

大きい方は、アイボリー色で全体に花柄の刺繍が入ったワンピース、小さい方にはネクタイが入っていた。

ネクタイは、マーくんへのプレゼントか、と怒りと苛立ちがやってきた。


カバンの中身は、財布、ハンカチ、ティッシュ、化粧ポーチと特に変わったものはなかった。

財布を開けてみると所持金2万3千円と、小銭。小銭入れの中に小さな鍵が入っていた。

どこの鍵なのか、心当たりを探してみたが、分からず、他には検討もつかなかった。


私はタブレットとスマホを持って、ある場所に向かった。

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