第9話
…つくづく厄介な事になってきた。
俺は謎留に一度戻るよう伝え電話を切ると、その場にいる全員にその事を伝えた。
ねくろは面倒くさそうな顔をし、ハチゴロウは「変幻め…許さん! ワシの手で引導を渡してやる!」と激昂、TATARI SQUADの四人は「別の案件が入った」と言い機材を片付けて撤収し始めた。
彼らは売れっ子だし、引き止める義理もないから仕方ない。
俺は彼らを見送ると、スマホで再び謎留と連絡を取った。
謎留が到着するまで待機だ。
それまでに最低限の対応策は練っておきたい。
「変幻と動画やSNSでレスバしてる時に、奴の弱点は掴んでたの…でも、決定打を打とうとした時に…」
ねくろは2本目のタバコの煙を吹き出しつつ言った。
「突然、誤認逮捕されたって訳か」
Abareが問う。
ねくろは頷きつつ続けた。
「変幻は妖術で数多くの同業者を追い落として今の地位に這い上がった…、わたしの師匠も変幻の妖術に嵌められて苦しみながら病院で怪死した…」
ねくろは吐き出す様に言った。
彼女の師匠とは、伝説級のレゲエDeejay兼ネクロマンサー兼YouTuber『
バイク事故で2ヶ月間生死の境を彷徨った際に『賽の河原で
合成音声とフリー素材によるまとめ動画を数多く作られるレベルで、オカルト系YouTuber界隈なら誰でも知っている事案だ。
変幻示斎…本当に陰湿で厄介な奴だ。
ねくろは2本目のタバコを捨て、靴で揉み消した。
程なくして遠くから車のエンジンの音が聞こえてきた。
謎留だ。
謎留は車から降りると開口一番、「ねくろ、変幻は強大な妖術でお前を奴隷にし生涯自分のものにしようと企んでる…その為に警官や地元民を殺害して儀式を続行中だ」と告げた。
こんな時にねくろには申し訳無いが、物凄くしょうもない動機だと感じた。
たかだか、一人の女性YouTuberの為に多くの人々の命を犠牲にするなんて…。
だが、ねくろは俺達と長らく動画配信をやって来てた盟友でもある。
変幻の偏執的な行いを見過ごす事は出来ない。
ふと皆の顔を見る。
ハチゴロウ含め全員の意志は同じ様だ。
「よし、みんな考える事は同じだな」
謎留がそんな俺達を見て静かに語りかける。
皆、黙って頷く。
謎留はこれから行う作戦について話し始めた。
1:それぞれニ台の車に分乗し、時間差で変幻を轢く。
普段なら立派な轢き逃げ殺人だがそれを咎めるであろう地元民や警官たちは皆、魂を変幻に吸い上げられ亡き者にされている筈だ。
2︰それで死ななかった場合、ハチゴロウの退魔の術でトドメを刺す。
実に完璧だ。
俺(ダイカタナ)・手斧・ハチゴロウはAbareの車に、正雄とねくろは謎留の車にそれぞれ乗り込み町の広場へと向かった。
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