第4話

『デミゴッド』のチャンネル登録者が50万人を超えた。

登録者が増えたことについては素直に嬉しいと思う。


しかしながら、それと同時に悩ましいことも増えてきた。


それは新規登録者の早期離脱の理由の大半を占める『デミゴッドは廃墟の不良を幽霊と誤認して撮影する肖像権侵害上等の迷惑系YouTuber』という誤解だ。


確かに先客として不良達がいる場合が多い(概ね撮影外でAbareと謎留にボコられ退散する)のでそういう誤解が生じるのも致し方無いが、手斧の卓越した動画編集技術で適宜カットやモザイクを周到にかけており、こう見えて肖像権には配慮している。


規模の大小を問わず、動画配信を行うなら地権者や施設管理者の支持に従うのは当然だし無関係の通行人の顔を映さないのは今や『常識コモンセンス』だろう。


なお、撮影前に物件の地権者を始末するのも後々不法侵入に問われない為というのもそうだが、アレは俺達なりの許可申請だ。

よく『沈黙は同意とみなす』と言うだろう?

そういう事だ…話が逸れたな。


ともあれ、動画がバズると起きる『風物詩』に一喜一憂するのだけは未だに慣れない。


また最近はそれだけに留まらず、事実無根の誹謗中傷も併せてリプライやDMで送られる事が増えてきた。


例えば『動画がつまらない』『ダイカタナ(俺だ)の顔がブサイク』なら意見論評の範囲だが、『デミゴッドが撮影した土地の地権者や撮影に居合わせた地元の不良は必ず行方不明になる。絶対殺して埋めてる』は明らかに名誉毀損なので気を付けて欲しい。


発信者情報開示請求や民事訴訟も数増えると面倒だしクッソ煩わしく金にならない些事に時間を取られるの嫌だなー、と考えてたら大口のスポンサーから呼び出しが入った。


言い忘れてたが、『デミゴッド』にはスポンサーが付いている。

謎留の顔が広いという事もあるだろうが、あらゆる業種が俺達の活動をサポートしてくれているのだ。


俺達がスポンサーに持つ事は宣伝効果にも繋がる。

なので面倒臭がらずにこういった話し合いには応じる事にしている。


今回は手斧を伴ってそのスポンサー企業を訪問した。

ちなみに『デミゴッド』には専属のマネージャーはいない。

なので今回の様に何か交渉やアポイントメントを取る場合は手斧が請け負うことになる。

そんなこんなで俺と手斧はそのスポンサー企業(不動産関連らしい)本社の会議室に案内された。


しばらく待っていると、精悍な顔つきの30代の男が会議室に入って来た…どうやら彼が社長らしい。


挨拶もそこそこに、早速本題に入った。


スポンサー企業社長の意見をまとめると『オカルト系YouTuberの割に怪異を撮影出来てないのはよく有ることなので仕方無いが、視聴者はもっと体験談や噂話の検証みたいなのを欲してるのではないか?』という事だった。


なるほど、言われてみればそうだ。


大抵の心霊系YouTuberはビデオカメラを片手に廃墟や事故物件等に足を運んでいるが、撮影した動画の殆どが音声のみだ。

音でビビらせたり怖がらせる手法なのだが、はっきり言ってそういった映像は需要はあまりない。


『デミゴッド』としても何度かそういった動画を出したものの、アナリティクス上でも再生数が振るわない事が多い傾向にあった。

その意見には一理ある。


ただ、そういった動画でも面白がられて再生数が爆伸びしてるものあるのも事実だ…やはり演者のキャラクター性なのだろうか?

そう考えると手斧が演者として適任なのかもしれない。

俺は地味目で個性が無いし、Abareも謎留も裏方ならまだしも演者としては微妙に厳しいところがあるから、動画では使いづらい。


そこで、次のZoom会議で他のオカルト系YouTuber達とコラボする案を皆に持ちかけてみた。

手斧とAbareは賛成、謎留も反対はしなかった。


そうして、次は他のオカルト系YouTuber達と合同で動画を撮ることになった。


今、飛ぶ鳥を落とす勢いの4人組『TATARI SQUADタタリ・スクワッド』。

知る人ぞ知るベテラン『拝み屋怪談師ハチゴロウ』。

そして自称ネクロマンサー系女性YouTuber『萬椎まんしいねくろ』の三組だ。

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