第2話

Abareは宣言通り、建物の地権者を探し出し首尾よく山に捨てて来たようだ。

それも不動産業者に成りすまし、法務局で登記簿謄本を確認し数人がかりで行うという念の入れよう。


Abare(時には謎留)のお陰で俺達は心霊スポットで撮影出来ているようなものだ。

その証拠に(時たま動画コメント欄でグダグダ因縁付けてくる奴はいるが)、実際に一度も不法侵入に問われたことは無い…動画が公開される頃には、地権者はこの世にいないからだ。


そして俺達は撮影を始める。

撮影開始までの流れ自体は、ありふれた他の心霊系YouTuber達と変わらない。


心霊スポットに行き、雑談しながらナイトビジョンで撮影し動画編集して公開。

これだけだ。

ただ、今回俺達が撮影するのは廃墟だ。

普通の心霊スポットとは違い、それなりに危険を伴う。


大体においてそういう『雰囲気のいい』場所は不良が酒盛りやデートに使ってたり老朽化で崩落する可能性があるのが、一番怖いところである。

当然メンバーの健康を考え、下見の際は築年数とアスベスト塗布の有無も確認する。


幽霊やラップ音よりも生きてる人間や、維持管理されていない廃墟の方が恐ろしいのだ。


そういうわけで、今回は山歩きの経験のあるAbareの他に謎留にも協力をお願いした。


俺達5人は件の廃墟に到着した。


廃墟の中には正雄の持ってきた照明と手斧達が用意したカメラを持って潜入していく……ただこの建物、案の定不良の溜まり場でもあった。

数人の酒かシンナーで酩酊してそうな輩っぽいのがこちらを睨んでいる。


こういう場合の対処法はいつも決まってる。

Abareと謎留による『掃除』だ。


30分後、不良達は全員床に転がっていた。

そいつ等を手近にあった物置に投げ入れ、念の為に表から扉を溶接した。

これで撮影の邪魔をされることはないし、万一そのまま死んだとしても新たな怪異となってくれるだろう。

一挙両得だ。


あとは正雄が用意してきたカメラと照明を持って撮影を開始するだけだ。

先程不良たちを閉じ込めた物置から怒声や扉を叩く音が聞こえる…これは怪異に相違ない。

しっかりカメラに収めよう。


それから特段危険なこともなく撮影は終了し、動画も編集して公開した。


当初の『地縛霊退治』は出来なかったものの、先のシーンの雰囲気のおかげかなんと再生数は300万回を突破したのだ! 謎留とAbareの働きのお陰だ。


二人ともグッジョブ!

さて次は何をやるか……。

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