夢の中
みりは、つかれてぐっすりとねむっていました。夢の中で、みりは、お母さんねこや、四匹のきょうだいねこたちと、にぎやかに暮らしていたころにもどっていました。一匹、また一匹と、きょうだいたちがもらわれて行き、とうとう、みりがもらわれていく最後の夜になりました。お母さんねこは、長い間、みりを、やさしくなめてくれました。
「お母さん、わたしが出て行ったら、さびしくない?」
「そうね。」
「わたし、あしたは、どこかにかくれていようか? たとえば、おふとんの中とか、クローゼットの中とか。人間たちに見つからないようにしていればいいんにゃ。」
お母さんねこは、みりをやさしくかんで、それから、かおをなめました。
「だめよ。そんなことをしたって、みつけられちゃうわ。」
「でも、みんながいなくなったら、さびしいでしょ。わたしも、おかあさんとはなれるなんて、さびしいもん。」
「だいじょうぶよ、みりには、あたらしい家族ができるのだから。」
「いやにゃ。」
みりは、あたたかいお母さんねこのおなかに顔をおしつけて、めをつむりました。
「ねむくなったにゃ。」
「おやすみ、みり。」
みりは、お母さんねこのぬくもりを確かめるようにして、深い眠りの底に落ちて行きました。眠りの底で、みりは、自分の名前を呼んでいる声がしたように思いました。お母さんじゃない、ほかのだれかが、みりを呼んでいる声が。
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