寝室のクローゼット
お父さんが、クローゼットの中をのぞきこみました。すずかちゃんは、自分も探したかったのですが、高い場所まで手が届かないため、お父さんにお願いすることにしたのです。
「みり、ねていない?」
「ここにはいないなあ。だが、もっとよく見てみないと、わからない。ねこは、上のほうへ上がりたがるからなあ。」
下段には、収納ボックスがあり、かばんや、季節ごとの服がしまってありました。上段のスペースにもやはり収納ボックスがあり、その横には、つっぱりぼうが設置され、上着やズボンやスカートがハンガーにかけてつるされていました。
「いなそうだぞ。」
お父さんは、服をよけて、上段に上がり、ひざをついた状態で、さらに上のほうまで腕を伸ばして、手さぐりで、確認しました。
「お母さん、ライトを持ってきてくれないか。」
「はいよ。」
お母さんは、手元にあった、スマホのライトをつけて、お父さんに渡しました。
「ありがとう。」
「なにか、見えた?」
すずかちゃんが言うと、お父さんは、天井付近をライトで照らして、言いました。
「ああ、そういうことか。」
お父さんは、天井板の一部が、下から押せば、かんたんにはずれるようになっていることに気づいたのです。
「前にも、とびらを開けはなしていた時に、みりが入りこんだことがあったんだよ。その時は、服の上でねていただけだったが。今日は、ここから、上へ行ったんじゃないか? もうそれ以外には考えられないだろう。」
すると、お母さんが、
「みりは、クローゼットを通り抜けて、異世界へ探険に行ったのかもしれないわ。」
「もう、お母さんたら、ふざけて。みりが、もしも、異世界転生して、戻って来なくなったら、お母さんのせいだからね。」
「そうね、ふざけたこと言って、ごめんなさい。わたしが、とびらを閉めちゃったから、出てこられなくなったのかもしれないものね。でも、まさか、みりがいるなんて思いもしなかったわ。」
お父さんが、クローゼットから出て来ました。
「すずか、みり救出のため、屋根裏部屋の『ひみつきち』へ行くぞ! だがその前に、はらごしらえだ。お父さんは、お腹がぺこぺこだ。」
「ごはんなら、とっくに準備できているわ。はやく食べちゃいましょう。」
「オッケー。」
みりが、どこにいるのか、なにをしているのか、はやく探したいけれど、すずかちゃんのお腹も、さっきからグーグーなっていたのでした。
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