みりのパトロール

 昼間はほとんど寝てすごしているみりですが、じつは、夜になると、元気いっぱい活動します。なぜかといえば、ねこの目は、暗くてもよく見えるので、明かりが消えていても歩いたり走ったりできるからです。みりは、水飲み場で、水を飲み、その後、顔を洗いました。そして、のびをしてから、玄関のほうへ歩いて行きました。

 では、どうして、みりが、わざわざパトロールをするのかといえば、まだまだ遊んでいたいから。夜遊びには、なににも代えがたいみりょくがあるのです。だから、ごくたまに、お父さんが、夜おそくまで起きて、リビングルームにいる時は、本当にうれしくて。いつまでもはしゃいでしまいます。うっかり、つめをたてて、お父さんにおこられることもあるくらい。でも、今日は、三人とも、はやめに二階へひきあげていったので、みりは、パトロールという名の、ひとりあそびをするのでした。

 みりがいちばん気にしているのは、おもちゃがころがったままになっていないかということです。ちいさいボールや、ペットボトルのキャップ、お父さんのくつしたなどは、よくみかけます。たいていは、おかあさんが、ひろってかたづけるのですが、忙しい日には、そのままになっていることがあるのです。

 みりは、キッチンの床、食卓の下、ろうか、おふろばの脱衣所などを歩きまわりましたが、あそべるものは、落ちていませんでした。玄関のくつをころがして、かみついて、足でけってみたけれど、どうも気がのりません。そこで、みりは、ろうかをダッシュして、スリッパにとつげきする遊びを思い出して、かなりの間、あそんでいたのですが、ようやく、ねることに決めました。

 お父さんとお母さんの部屋のドアは、みりが入って来られるように、開いていました。みりは、ドアのすき間をすりぬけて、お母さんのベッドの足元まで行き、まるくなりました。ところが、奇妙な音が聞こえてきたのです。

音は、クローゼットのあるかべの上、天井裏のほうから、聞こえてきます。みりは、気になって、ねむるどころではなくなり、ベッドをおりて、クローゼットのとびらの前にすわりました。とびらから服がはみ出ているところに顔を近づけて、前足をひっかけたら、とびらが、外側に開きました。みりは、頭と前足を上手に使って、クローゼットの中へと入って行ったのでした。


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