すずかちゃん家の玄関の明かりが灯ったころ、庭のちいさな穴から顔を出したものがいました。それは、のねずみの子どもたちでした。子ねずみたちは、親ねずみのかえりを待っていました。穴ぐらから出ないようにと言われていましたが、つい心配で、顔を出してしまったのです。

「あ、おかあさんが、かえってきた!」

「ただいま。」

母ねずみは、めずらしいものを持ってきていました。それは、クッキーのかけらでした。

「おいしそう。おとうさんは?」

「もうじきくるわ。」

遠くのほうから、ひとまわり大きな父ねずみが、小走りでやってきました。

「お父さん、どこに行ってたの?」

「下見をしてきた。なかなかのはっけんだったぞ。」

「あなた、むちゃなことをしてはだめよ。おやしきのなかには、なにか、わながあるにちがいないのだから。」

「うむ。」

子ねずみたちは、顔を見あわせました。

「ぼくたちも、おとうさんみたいに、ぼうけんがしたい!」

子ねずみたちの目は、夜の星のように、きらきらとかがやいていました。いっぽうで、おとうさんの目の色は、やみをうつし出したように、暗かったのです。

「子どもたち。けっして、おとうさんについてきてはいけないよ。いいかね?」

父ねずみは、それだけ言って、ねどこに入っていきました。

子ねずみたちは、母ねずみからもらったクッキーのかけらを、大事そうに手で持って食べてから、父の後をおいかけて、ねどこに入って行ったのでした。

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