わたしのかぞく

みなりん

リビングルーム

「明日から、家族がふえるんだよ。」

 それを聞いた、ねこのみりは、かいぬしのすずかちゃんのひざの上に前足をのせ、しっぽをピンとたてて、「にゃあ」とへんじをしました。

「みり、いいこちゃん。」

すずかちゃんは、みりのせなかをなでました。すると、みりは、またへんじをしました。

「にゃあ。」

 それを見ていたお母さんが、キッチンから声をかけてきました。

「それで、みりは、なんて言ったの?」

「にゃあ、って。」

「にゃあは、にゃあでも、どんなにゃあ?」

「え、それ、どういういみ?」

すずかちゃんは、笑いました。

「だって、ほら、今、みりに、大事なおはなしをしてたみたいだから。みりにつたわったのかなって思ったのよ。」

「みりに?」

「そうよ。みり、こっちにおいで。おやつあげるわ。」

すると、みりは、さっと身をひるがえして、お母さんの足元にかけよると、おやつをもらったのでした。

「みんなで、おやつにしましょう。なににする? お母さんはねえ、おからのクッキーに、ゴーヤとバナナのジュース。すずかちゃんは?」

「わたしも!」

「じゃあ、畑からゴーヤをもいで来て、ジュースにしようか。お庭でおやつにしたら楽しいわね。」

「うん。」

それから、お母さんとすずかちゃんとみりは、お庭のテーブルのところで、楽しくすごしました。

 その晩、すずかちゃんは、お母さんといっしょに、夕食をすませた後、テレビを見ながら、お父さんの帰りを待っていました。するととつぜん、ねこのみりが、さっと立ち上がり、カーテンの下のすき間に入り、身をかがめたのです。見ると、しっぽの毛が逆立ってふとくなっています。

「みり、どうしたの?」

話しかけても、みりは、なにも言いません。窓の外を見ています。いったい、なににおどろいたのでしょう。お母さんが、立ち上がって、窓のそばへ行き、カーテンをめくりました。

東の空に満月がのぼっていたおかげで、庭ぜんたいが青白く明るく見えました。母屋の前には庭があり、テーブルとイス、その向こうに、木でできた小屋がありました。小さな畑もあります。お母さんは、この家を買う時に、庭で、花や野菜を育てるのが夢だったのです。ねこのみりも、小屋へ入って遊ぶことがありました。ねこというのは、せまいところが好きなものです。

「なんかいる? やあだ。」

すずかちゃんは、みりのふとくなったしっぽに、そっと手をやると、みりは、しっぽを左右に大きく動かしました。そして、そのままきびすをかえして、階段をかけあがって、二階へ行ってしまいました。

お母さんが、カーテンを閉めました。

「ねこってふしぎよね。もしかすると、わたしたちには見えない、ふしぎなものが、見えたのかしら。」

お母さんが、まじめなそうに言ったので、すずかちゃんは、なんだか気になって、あたりを見まわしたのです。

その時、急に、リビングルームの戸がすーっと開いたので、緊張が走りました。

「ハックショーーーン!」

「うわっ、びっくりした! お父さんか。ああ、もう。」

「ただいま。わるいわるい。おどろかせたかな。」

お父さんのクシャミは、家中どこにいても聞こえるくらい、迫力があります。お母さんは慣れっこですが、すずかちゃんも、みりも、いつもおどろかされてしまうのでした。

その後、お父さんが、お風呂に入り、お母さんが、キッチンへ行ったタイミングで、すずかちゃんは、二階の自分の部屋へ行くことにしました。


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