第19話好感度アップ作戦
この学園の制服は、男女共に上品な作りになっている。男子はジャケットとネクタイを常に着用し、女子のスカートの丈はくるぶしあった。
前世だったらスケバンと言われてしまいそうだが、この世界では肌の露出などもってのほかだからしかたがない。ちなみに、半袖はない。
前世のようなうだるような暑さがないせいで、長袖でも過ごせるからだ。むしろ、冬の寒さの方が厳しい。
入学式では学長からのありがたい話が終わり、新入学生の代表でウィスタ王子が謝辞を述べる。
いつもはポンコツなウィスタ王子だが、最近になって外面を取り繕うことを覚えた。今のウィスタ王子は、落ち着いた理想の王子様である。
こうなってくると地味だとも言える茶髪も落ち着きがあるように思えるから不思議だ。まぁ、普段は外見が派手なクリスがいるから相対的に地味に思えてしまうのだろうが。
新入生が集まる場で、俺はディアナを探した。
しかし、彼女の姿はない。
彼女も同級生のはずで、クラスは一つしかないのに何処にいるというのだろうか。朝から探しているのだが、影も形も見当たらないという状況だ。
「あっ、そうか。気配を消しているのか」
他の娘のルートを選んだ場合は、ディアナは姿を消してしまう。暗殺者として鍛えられたために気配を殺しているという設定のせいだ。
開発者運営はプレイヤーに浮気をしているような罪悪感を与えないようにするため、ディアナの登場を最低限にしたかったのだろう。プレイした当時はありがたがったが、今は余計な設定だったと思ってしまう。おかげで、ディアナを探せない。
代わりに、イリナを見つけた。
イリナも俺に気がついて、笑顔で手を振ってくれる。クリスが隣にいたが、目に包帯を巻いた彼にはイリナの姿は見えない。つまり、間違いなくイリナは俺に手をふった。
これは、かなり高感度が高いのではないのだろうか。クリスとイリナのルートの可能性が消えて、俺は一人で「よっしゃ!」と呟いていた。
「やばい……可愛い」
理想としてはディアナを助けて、イリナとの仲を深めることだろうか。
それにしても前世の俺は、こんなに可愛い子と付き合うゲームをしていたなんて羨ましすぎる。
「えっと、イリナと次に接触するのは……たしか」
入学式後の懇親会である。
そこで、周囲と馴染めていないイリナに声をかけるのだ。そこで、第一印象の微妙さを盛り返さなければ。
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