第4話嫌われるためのプレゼント



 婚約が決まれば、男性側が女性側に挨拶に行くことが必須になる。その際にはプレゼントを用意するのが風習になっていて、それを何にするかを俺は自室で悩んでいた。


「気に入られないためのプレゼントが必要だよな」


 安物を……と思ったが、下手に安い物を買えば父の顔に泥を塗る。失礼にはならないが、ディアナに好かれないような物にしなければならない。


 このような時には、アクセサリーを送るのが鉄板だ。指輪に首飾り、ブローチやイヤリング。格式高い家ほど高価なものを送り、男性側の財力を女性側に証明するのである。


「そうだ。高価でも似合わないものを渡せばいいんだ」


 俺は、まだディアナの容姿を知らないことになっている。だが、ゲームの記憶を持っていた俺は本人よりも詳しくディアナのことを知っていた。


「ディアナはたしか……」


 俺は自分の日記を見て、ディアナのことを確認する。ディアナは黒髪に青い瞳で、感情の起伏がないに等しい人間らしい。


 日記に書かれているディアナは数年後のものだが、簡単に人間性が変わるとは思えない。


 ディアナとの対面は一ヶ月後だが、ゲーム開始は十五歳になって全寮制の学園に入ってからだ。故に、ヒロインたちの幼少期については、俺も分からないのである。


「アクセサリーに興味があるタイプだとは思えないから、何を送っても好感度に変化はないのか……。でも、万が一ってこともあるし」


 迷いに迷った俺は、とある人物を頼ることにしたのである。


「女性のことは女性に聞け作戦だ」


 俺は拳を握り、すぐの馬車を用意してもらった。目指すは、元に婚約者が住まうファム家の屋敷だ。


 ユーヤ姉さんはハトコであり、攻略対象の一人だ。ユーヤ姉さんの二歳だけ年上だが令嬢らしい気品あふれる人柄で、俺は昔から姉のように慕っている。


 彼女ならば、女性がもらってがっかりするようなプレゼントを知っているはずである。



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