第8話 『プレイヤー』狩り

 誰も、動けなかった。

 侵入者以外は、だが。

 侵入者は、たった二人。とは言え小銃を持った二人、である。少なくとも戦闘力数十には上るだろう。これをゴミ扱い出来るのはどこぞの戦闘民族くらいだ。

 宇宙人、もとい地球外生命体、という意味ではむしろそちら寄りと言ってもいい栗人だが、身体からだ自体は、生まれも育ちも地球人とほぼ同等である。適切な支援無しには、出来ることも変わらなかった。


「よぉし、いい子だ。そのまま大人しくしていろ」

 喋っているのは、最初と同じだ。

 とは言え、明らかに機械で変質・多重化させている声からは、性別も年齢もうかがい知れない。

 体格からして、男性であろうとは推測出来るが、状況を考えると、この仮定はあまり信頼出来ない。

「AK?」

「あからさまだし偽装っぽい」

 廊下側の席の軍事愛好者ミリタリーオタク達が、独り言に近い囁きを交わした途端、

「おい!」

 これまで喋っていなかった方が、銃床じゅうしょうで金属ロッカーを激しく叩いた。掃除用具入れ、の文字が歪んだ。

「大人しく、してろ」

 一応、彼ないし彼女らも無闇に学生達を傷付けたいわけではないらしい。

 が、それがわかったところで、どうにかなるものでもなかった。

 静まり返ったところで、最初に喋っていた方……仮にAとおく……Aが引き取ったように言う。

「よし、それじゃあ、一人ずつ確認したいことがある。そのまま黙って、これでも見ていろ」

 Aが、教室の前側にある黒板へ何やら書いていく。意味など無いように見える、摩訶不思議な模様。級友達クラスメイトは皆目検討もつかない様子だ。

 ただ、栗人だけが、かつて刷り込まれた記憶に思い至っていた。

――『プレイヤー』狩り。

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