第2話 なんでもないようなフリしてたけど初キスだったの!

「キス、しちゃった」

 少女は独り言ちた。

 既に自宅。湯船でゆっくり温まりながら、教室での出来事を思い返していた。

「あいつ、ああいうこと、するんだなぁ……」

 自分の表情が相手を誘ったのかも、などとはつゆほども思わず、少年の――大州だいす栗人くりとのせいにしていた。

「ヘタレだと、思ってたんだけど」

 もう半年以上付き合ってはいるが、これまでは何もしてこなかった。してこなかったのに――

「いきなりキスとか、バカ」

「初めて、だったのに」

 見栄を張って、なんでもないようなフリをしていたが、そういうことである。

 そんな見栄は張らなくて良い、などということは、思春期の少女なので、まだ知らない。

 自分の頬が緩んでいることも、知らない。

本当ほんと、バカ」

――顔が熱いのは、のぼせたせいだ、きっと。

 心の中で誤魔化して、少女らしくも均整の取れた身体を拭きに上がった。


「キス、しちまった」

 少年は独り言ちた。

 帰宅して、秋風に吹かれても収まらなかった火照りを鎮めるために、低めの温度のシャワーを浴びた。

 それでもなお落ち着かず、部屋の寝台ベッドに横たわり、幾度目かの反芻をしていた。

「やっと、キス、出来た」

 思春期の、少年である。好きな女の子に触れたいと思うのは、自然なことだ。実際のところ、今まで何度も機会チャンスを狙っていたが、果たせずにいたのだ。

「レナの唇、柔らかかったなぁ。っていうか、なんかとなって気持ち良かった。アレ、地球人独特のものなのかな」

 少年は、少女――流々舞るるぶ玲奈れいな、通称レナ――も『』であることを知らない。故に、誤った考察をしかけていた。

「また、したいなぁ」

 繰り返すが、思春期の、少年である。恋は性欲が見せる幻想だ、などと言われるまでもなく、渾然一体となったに、支配されていた。

「レナ、好きだ」

 本人に言うべきことを枕にささやいてしまうのも、仕方のないことである。


『プレイヤー』だって、恋をする。

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