基本コメディがいいかも、オノマトペ

 ところで、宮沢賢治や井上ひさしなどの一部の小説家は、オノマトペを多用しています。


 つまり、オノマトペには何かしらの力があるのです。じゃなきゃ、使われません。


 ただ、効果的な状況が限定的なだけで。


 あ、ここからは体感になるので、そのつもりでお願いいたします。


 オノマトペには直喩的なところがあります。直喩は「~のようだ」というやつです。何かを例えるときに便利です。この文は、砂上の城のように拙い、みたいな。


 直喩は、例えるもののイメージが強く付きまといます。それゆえに、例えられたものがわかりやすいという利点があります。


 オノマトペもそれと同じです。プカプカという言葉には、何やら軽いものが浮かんでいる、といった感じがする。サクサク、であれば歯切れがよいし、テラテラであれば、柔らかいながらも不快な感じ。


 だから、雨がどのくらい降っているのかを、水量がどうで、水のしぶきがどのくらいの勢いで跳ねてて、車のワイパーが動く速さとかを描写することなく「ジャカジャカ」で済ませることができます。


 ただ同時に「ジャカジャカ」というイメージに収まってしまいます。雨ならジャカジャカでいいですが、例えば、白熱する銃撃戦が「バンバンバン」で終わるのはどうなんでしょうか。銃を撃ちあっているだけなのでしょうか。

 跳弾の音は? 割れるガラスが飛び散って、血を流すマネキン。漂う硝煙の香り、リボルバーを握る手の感覚は……。


 いや、書く人によるし読む人にもよるんでしょうけど、オノマトペ一つで銃撃戦が終わったとしたら、私ならバンっと本をゴミ箱へ叩きつけると思います。



 つまり、使用する状況が限られている。



 この時考えてみたいのは、私やあなたがオノマトペというものに対するイメージです。たぶん、コミカルなものを思い浮かべる方が多いと思います。愉快で、漫画チックな印象。


 だからこそ、バンバンバン、というオノマトペがシリアスな銃撃戦においては、不適切なもののように感じられるのでしょう。ともすれば、作家が手を抜いたように訝しむかもしれません。


 これを避けるためには、イメージに沿った状況で用いるのがわかりやすいです。――コミカルな状況で使う。そうすれば、間違いはないでしょう。実際、井上ひさしはおかしさを誘うものが多い。


 また、オノマトペに幼げなイメージも付きまとっているのは事実です。であるならば、絵本的ないし幻想的な状況で使用するというのも考えられます。そうです、宮沢賢治はオノマトペを多用しています。



 まとめると、オノマトペはある音・状態を感覚的に伝えられる便利な言葉。だけど、手抜きだと思われたりコミカルになる恐れがあるということですね。


 コメディで使うのが一例となります。あるいは端的に伝えられるので、ファッション誌とか(私はあんまり読んだことありませんけど)。




 いかがだったでしょうか、オノマトペは別に使っちゃいけないものじゃない。薬のようなものなだけなのです。――取り扱いには細心の注意を。





(↓この先、余談)


 オノマトペはその言語を知らない人にも伝わりやすいという特徴があります。ふわふわ、は柔らかく、サクサクは軽い……万国共通ってことです。ある程度はですけど。

 また、AIによる解析も行われているみたいです。「かぷかぷ」のようなオリジナリティのあるものをつくってみるというのも面白いのかもしれませんね。

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カクヨムの9割がしらないレトリック 藤原くう @erevestakiba

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