第22話 決着

 ユリ:「ボクは、ピラーには成らないよ。だって、そうでしょ。ボクにばっかり、負担を押し付けて、皆んな、ズルいよ、卑怯だよ!」

 セクティ:「しかし、アー様、直々の御指名だ。これは受けて貰わないと、アーディア界、ナイラディア界全体が困る」

 ユリ:「知らないよ、そんなこと。皆んなで手分けしてやれば良いでしょ。なんでボクだけが苦難を背負わないと駄目なんですか」


 その時、タックが、セクティの中からホログラムを飛ばして叫んだ!


 タック:「おい! ユリ。オイラは、お前とそんなに話し込んでは、居ないけれど、お前は友達に成れそうな奴だと見込んでる。そのお前がそんな根性無しじゃ困るんだよ。頑張ろうぜ! カコ様だって、お知恵を貸してくれるさ。元気出せー!!」


 タックの叫びで、チックとテータは目を覚ます。

 チック :「ユリさん、話は聞いて居りました。ピラーになるとは名誉なこと。何故、嫌がるのです?」

 ユリ:「だって、面倒いじゃん。皆んな、面倒なことを持って来てるだけなんだよ」

 カコ:「そんなことは無いわよ」

 ユリ:「あ、セクティさん、目を覚ましたんですね。でも、髪の毛は、まだ金色だ」


 カコ:「良いのよ、暫く体はイマに任瀬て置く。ユリ、聞いて。嫌なことから逃げたって、幸せには成れないのよ」


 それはセクティ、いや、カコが衷心からユリの為に紡ぎ出した言葉だった。


 テータ:「ユリさん、私は直接、貴方のサポートは出来ませんが、セクティ様がサポートされる場合は全力でサポートさせて頂きます。だって、私達はお友達でしょう?」

 チック:「よし、私も目標が出来た。国王軍の親衛隊長に成る! くんなー!!」

 テータ:「頑張ってー!」


 ユリ:「そうか、カコちゃんも嫌なことから逃げては居なかったよね。カコちゃんは、良くやってると思う。あのおばさんだもの。やってることは、えげつないし、センスも無いからなあ。せめて、もうちょっと性格がまともならね・・・。なんか面白そうな目標できたかも。カコちゃんの為にも、ボクはピラーになるよ。記者さん、集めて! 会見するよ」

 

 そして、ユリは会見を開き、ピラー受託を発表。所信表明も同時に発表される。ユリセウ・パスプ・ウルク所信表明。


 [所信表明]勇気、元気、根気、正気を

       旨とします。


 これは、冷ややかな意見も散見されたが、お手並み拝見という日和見意見に、まとまる。そんな世間の寒々しい雰囲気などなんのそのと、チックは今日もくんなガードと訓練に磨きを掛けている


 ユリ救出に向かったラーハムは、ユリの無事を確認すると、エリへの報告へ走るのだった。


  セクティの中で3姉妹は考える。


 カコ:「人生とは、こうまでして生きる価値があるのか、その答えが知りたかった。答えは、人それぞれでしょう。充実に触れたものは、その価値を認め、充実に触れ得ぬ者は、その価値を認めることは無い。私の答えは、まだ出ない。しかし。私は腐らずに生きている。これが一応の回答よ」


 カコは、陰のある精一杯の笑顔で、そう言った。


 イマ:「生きた価値を知りたい、そう言って始めた僕の物語だけど、まだ冒険し足り無いな。でも、曲らずに生きた! そう言える」


 イマは、口角を上げて、自信を覗かせた。


 ミラ:「あたしは、あたしの魔法を紡ぎたい! そうカナンに言ったけれど、あたしはまだ魔法を紡げてすら居ない。早く自前の体を手に入れて、カコ姉のルームメイトから、抜け出せないとね。でも、溺れずに生きて居られているよ!」


 ミラは、2人の姉の目線を受けて、照れた。2人の目線は、愛と肯定に満ちている。


 ユリは、ピラーと成ってから、セクティとは距離が出来てしまい、アーディアとナイラディアの距離感の差を実感させられることが多くなっていた。そんなユリは、補佐官の監視を振り切り、セクティに会いに来て、3姉妹の決意を聞いてしまい、出るに出れずに居た。ユリは、独り呟く。


 ユリ:ボクは、汚れずに生きるよ


 それは汚れの多い場所に居る者として、逃げない決意だった。


 ユリは、ナイとの決着を付けるために、ナイの元へ向かう。カコを思うユリの体はは少年の肉体を得ていく。カコを思った少年の心に合わせるように。


 ユリ:「ボクは、カコちゃんの青い空を取り戻すよ」

 

 ピラーとの会見をナイには断る事はできず、ユリはナイと対峙していた。


 ナイ:「なんぞ御用ですかな、ピラー殿?」

 ユリ:「カコちゃんのトラウマは貴方だ」

ナイ:「傍女は強い力を欲した。実力だけを問われる世界で個人のトラウマなどに構っては居られん」


 ユリは今、カコのことでいっぱいだ。少年の姿だが、力は逆に漲って行った。


 ユリ:「貴方がカコちゃんの青い空を阻むストレスだ! カコちゃんの思いは通じず、貴方の思いは一方通行だ。こんな悲しい愛のやり取りは見ていても辛すぎるよ。だから、ボクはおばさんを殴る。正気になれ!」


 ユリは、ズンズンとナイの前まで進むと、ナイのストレートパンチをベチリとした。ナイは溢れる涙を止めることが出来なかった。


 ナイ:「このバンチは痛かったわい。心を殴りつけられた気がする。心は、どんな鎧で守るものなのかな?」


 ナイは、敗北したのだ。これを見た人は、皆んな。そう思った。


 ユリ:「貴方のは、一方的な愛の押し付けだ! そんなの愛でも何でもない! 愛はもっと双方向のものでしょう!? 貴方は恐れた。自分の過去の愛の失敗を! 貴方こそがトラウマに苦しんでいる。怖がらないで、カコちゃんを見て下さい。彼女も貴方を恐れてる。カコちゃんに青い空を与えられるのは、ボクでは無い。貴方なのです。恐懼の女神ナイよ」


 ナイは崩れ落ちた。ナイは思う。


 ナイ:(しかし、傍女も裏切られたぞよ?)と。


(第23話へ続く)

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