第15話 「星乃ひかりのクソゲー配信」
空色ライブに所属するメンバーは十人十色である。常識的な者もいれば、やべぇ奴も存在する。星乃ひかりは前者と後者どちらかといえば、後者のやべぇ奴側である。
「ほい〜今日は『ラストソード』やってく」
コメント:今回もちゃんとクソゲー持ってきたな コメント:まだやってなかった事に驚きを隠せない
コメント:最近は別ののクソゲーで忙しかったし
「中々時間取れなくてね〜話題になってた頃にやれたら良かったんだけどね」
『ラストソード』は2ヶ月程前に発売されたアクションRPGである。元々は有名ゲームハードで配信されたが、別の有名ゲームの音楽と酷似している有料BGM素材を使用していた事で3日と経たず、配信停止になってしまったゲームだ。
「とりあえず、なんか色々改善されたっぽいからやります」
コメント:さて、エナドリ持ってくるか
コメント:今回は何時間やるんだろうな
コメント:前回は14時間ぐらいだったっけ?
「いや〜オプションが充実してるね〜」
コメント:前のに比べたらされてるな!(洗脳済み)
コメント:これで充実……?
コメント:充実って何だっけ…?
タイトル画面からオプションを開くと、BGMの音量設定程度しかない。が、最近クリアしたクソゲーはオプションすらなかったので音量設定があるだけ充実していると言える。
「じゃ、やってく」
スタートのボタンを押すと、最近のゲームにありがちなムービーが始まる事なく、家の中で突っ立っているところから始まった。
「…どうすればいいんだろ」
家の中にいるのは自分とおそらく母親であろう女性だけである。それ以外の情報が全く無い。
「家から出れないな…お母さんに話しかけてみよ」
扉に近づいても何も反応が無いので、とりあえずベットで寝ている女性に話しかけてみる。
『薬を持ってきてくれないかい?』
『分かった。……ごめん母さん薬無いみたいだ』
『そうかい……悪いんだけど店で買ってきてくれる?』
『うん。分かった。行ってくる』
「あ、外出れた」
母親との会話が終わると外にワープする。薬を買いに店を探さなければならないらしい。
「店探すかぁ」
コメント:なんでワープしてるんですかね?
コメント:めんどくさそう
コメント:マップとかないしなぁ
──数分後
「店…どこ…?てか、この街でかくない……?」
店を探し始めてから数分。未だに見つからず街を探していた。理由としては街が思ったより広い事があげられる。
コメント:マジでどこ…?
コメント:街一周して見つからない事ある?
コメント一周するのにめちゃくちゃ時間かかるのやば
「……ん?あれかな」
もう1度街を周ってみると、路地裏に小さな店を見つけた。
「なんでこんな分かりにくい?…クソゲーだからか」
コメント:クソゲーなんだよね、これ
コメント:雰囲気だけは王道RPG
コメント:王道RPG……? 妙だな……
「お邪魔しまーす」
店の中に入り、店主に話しかける。
『すいません。薬をください』
『悪いが今薬草を切らしててな』
『そこをどうにか…!』
『じゃあ薬草を取りに行ってくれないか?それならすぐに薬を作れる』
『…分かりました!すぐに取ってきます!』
「うわっ!ここどこ!?」
会話が終わると全く知らない草原にワープしていた。
コメント:なんで毎回ワープするんすかね…?
コメント:薬草探しの時間ダァ!
コメント:薬草ってどこにあんだ
「また探さなきゃ…てかいつの間にか武器持ってるし」
今さっきまで持っていなかった武器が腰にある。 ホントになんで…?
「うわっモンスター来たし……倒そ」
最初に近づいて来たモンスターは、RPGの王道キャラのスライムだった。
「当たらねぇ!武器の判定ちっさ!」
思いっきり武器をスライムに振り下ろしたけれど全く当たらなかった。
コメント:当たらなさすぎで草
コメント:判定どうなってんねん
コメント:スライムでかいのに当たらないマ?
「てか、スライム強くない!?めちゃくちゃデカイからかな!?」
自分の攻撃が当たらない割にスライムの攻撃は当たるので体力が段々と減っていく。
「死んだ〜」
結局攻撃が当たらないままスライムにやられてしまった。普通のゲームなら自宅とかでリスポーンするだろうが、このゲームは草原でリスポーンした。しかもスライムの目の前で。
「なんでそんなリスポーン早いの〜!」
コメント:スライムの目の前で草
コメント:リスポーンめちゃくちゃ早くて草
コメント:どう倒すんですかね……?
「もうヤケクソじゃあ〜!」
もう一度武器である剣を振り回す。
「当たった!?てか、倒した!?」
今さっきは全く当たらなかったのに今度はしっかりとスライムに直撃して倒すことに成功する。 コメント:なんで当たったんだ……?
コメント:武器の威力鬼高ぇ!このまま全部ぶっ壊そうぜ!
コメント:もしかして運ゲーなのか…?
コメント:武器当てるのが運ゲーは終わりです
「武器の判定バグり散らかしてるな〜」
スライムを倒した後、また新たなモンスターが湧いて来たので判定がおかしい武器を振り回しながらなんとか薬草を見つけた。
「なんかボスキャラみたいなの出てきた、ダル」
コメント:武器が一回当たるのに4、5回振り回さないといけないの草
コメント:バカデカいボスにも当たらないのやばいw
コメント:これボスの判定もバクってるだろw
ボスとの戦いが始まって数秒、ボスの攻撃は全く当たらず体力は全く減らない。逆にこちらの攻撃は何回か武器が当たっているので少しずつボスの体力は減っていっている。
「ボスみたいな奴の攻撃全く喰らわんくて草」
コメント:楽だからいいやん
コメント:バグなのか仕様なのか分からん
「なんだ〜楽勝やん」
コメント:油断してると足元すくわれそうw
コメント:楽勝〜
「へ?死んだ!?」
今さっきまで全くダメージを喰らってなかったボスの攻撃が直撃し、満タンだった体力が一気に吹き飛ぶ。
「急に攻撃当てないでよ!あ〜また、最初の草原からだし…!」
コメント:攻撃力高すぎ
コメント:一撃で死んでて草
コメント:やっぱり足元すくわれてます
コメント:なんで今さっきまで当たらなかったんです…?
コメント:これがボスの力か…
「もっかいあそこまで戻らないと」
ボスに倒された事で草原の最初の所にリスポーンしたのでまた奴がいる所に戻らなくてはいけない。2分ぐらいかかるので地味に面倒くさい。
「うっわ、体力戻ってるし…」
今さっき削ったはずのボスの体力は元通りになっていた。もう一度ボスとの戦いが始まる。
「やるっきゃないな〜」
──2分後
「うい〜倒せた〜」
ボスをなんとか倒すことができた。結構時間が経ったが、まだ最初のクエストである。
「薬草あった〜」
ボスを倒すと薬草が出てきた。そしてそれに触れると店にワープした。
『持ってきてくれたか!』
『はい』
『ありがとう!これで薬を作れる。待っててくれ』
『分かりました』
──数分後
『できたぞ!持っていけ!代金はいらん!』 『ありがとうございました』
「やっとできたか〜薬作るのに時間かかりすぎ〜」
薬を作っている間は店から出られなかったのであり得ないぐらい暇だった。
コメント:10分ぐらい雑談してたな
コメント:店が狭すぎるから何もできねぇ
コメント:俺たちと話せてるだけマシなのかもしれん
『母さん。薬買ってきたよ』
『ありがとね』
店から出たらすぐにワープし、家に帰ってきた。そして母親に薬を渡した後、外に出ると今さっきの草原にワープした。すると──
【ミッション:魔王を倒せ】
このようなテロップが出た。
「は?どうしろと?」
コメント:突拍子なさすぎですやん
コメント:どこにいんだよ!
コメント:どうすんだよー!
あまりに突拍子がない【魔王を倒せ】というテロップに彼女は少しだけイラついた。だが─
「よし、頑張って攻略しよ。何も情報ないけど」
コメント:マジで何も情報ないことある?
コメント:あまりに情報が無さすぎる
コメント:せめてマップをください…
「とりあえず動くしかないね」
コメント:そだね
コメント:頑張れ〜
コメント:おい!エナドリ持ってこい!
コメント:何時間かかるかな…
「できるだけ早く終わらせたいけどね」
コメントと話をしながら草原を進んでいく。
コメント:例の場所までは行ってほしい
コメント:そこまでにどれだけ死ぬだろうか
コメント:まぁ、頑張ってくれ
−−−例の場所−−−
「ふぅ〜急にダンジョンっぽくなるじゃん」
この場所に辿りつくまでは湖や森の中での戦闘だったので、いきなりダンジョンっぽくなって驚くのも無理もない。
「ん?なんだアレ?動く床かな?」
ダンジョンの中を探索していると、偶然動く床を見つけた。おそらくその床に乗らなければ次の場所に辿り着く事が出来ないのだろう。
「乗るか〜」
こっち側に来た床に乗り、動くのを待つ。そしてその床が動いた瞬間──
「はぁぁぁ〜〜!?!?」
床だけが動き、自分は奈落の底へ落ちていった。そう。この床は自分も一緒に動かなければ落ちてしまう床だったのだ。
「どうしてだょぉぉー!!」
コメント:めちゃくちゃ良い反応で草
コメント:初見はしゃあない
コメント:うるさwww
「はぁぁぁー萎えたわ。別のクソゲーします」
コメント:なんでだよ!
コメント:クソゲーの息抜きにクソゲーするマ? コメント:どうして別のクソゲーするんすかね
「これするか〜」
ラストソードを一度止めて、休息のために別のクソゲーをプレイする。休息のためにプレイするクソゲーは所謂虚無ゲーで作業感のあるゲームなので休息にはもってこいである。
「このゲーム久しぶりだなー」
コメント:クソゲーを久しぶりにやりたくなる事ってあるんだ……
コメント:このゲームって虚無ゲーだよね?
コメント:うん。まじで時間かかるし面倒くさい
「雑談しながらしやすいし良いゲームだよね〜」
コメント:でもクソゲーなんだよね
コメント:良いゲーム…?
コメント:いつまでかかるかな
──数時間後
「今日は終わるわ〜おつかれ〜」
コメント:結局最後はずっと雑談だったなw
コメント:おつかれ〜
コメント:乙〜
−−−この配信は終了しました。
「思ったよりやったな〜」
昼から始めた配信はいつの間にか12時間近く経っていて、betubeの枠ギリギリだった。
「ん?デェスコ来てる」
イツキ『ひかりちゃん!メンバー決まったよ!』
ひかり『本当!?良かったね〜』
イツキ『マジで良かったよ〜』
ひかり『メンバーは誰?アタシ知ってる?』
イツキ『んー知らないかも。如月カイさんなんだけど』
ひかり『なんかイツキがabcxのコーチング受けるって言ってた人?』
イツキ『そう!知ってんじゃん!』
ひかり『了解。顔合わせ配信する?』
イツキ『もちろん!明日できる?』
ひかり『多分できるわよ』
イツキ『オッケー!後で連絡するね!』
「コラボ配信久しぶりだな」
最近はあまり箱内でもコラボしてなかったし良い機会だな。abcxはめちゃくちゃ得意というわけではないけど、上手くなれるように頑張ろう。
side:カイ
顔合わせ配信の日程が決まったらしい。流石に遅れたらまずいので今日は早く寝る事にしよう。そう思いながらベッドに 入った。
──そして配信開始時刻少し前になった。
「カイさん!お疲れ様〜」
「お、お疲れ様です。水無瀬さん」
「もうちょっとしたら来ると思うからちょっと待とうか!」
「わ、分かりました」
そんな事を話していると、いつも通りの機械音が鳴り星乃さ んが入ってくる。
「こんちゃ〜めちゃくちゃ寝てたわ〜」
「ひかりちゃんおはよう!」
「お、おはようございます。は、初めまして如月カイです」
「初めまして〜星乃ひかりです」
めちゃくちゃ緊張してるけど大丈夫だろうか。まぁ、するしかないんだが。心配なのはもちろんいつも通りの話せるかどうかだな。
「じゃ配信始めるよ〜大丈夫〜?」
「いいよ。終わったらクソゲーする?」 「え……?なんで…?」
配信終わりのクソゲーを提案されながら顔合わせ配信が始まった。
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