第2章 Raising cup編

第14話 「……もう1回言ってくださいますか」

配信者カップが終わった後すぐに水無瀬さんから連絡が来た。内容は『話があるからリアルで会えないか?』というものだった。……どうする?行くのか俺。というか行けた所で話せるか?


一応めちゃくちゃコミュ障なんですけど。ネットでもあんまり喋れないのにリアルで会って喋れるわけがない。


「マジでどうしようか」


行かくても話をしてくれないだろうか。流石に会うのはキツイな。


「聞いてみるか」


kai『すいません。流石に会うのはキツイかもしれません。できればこの後話してくれませんか?』


「早っ」


水無瀬さんから一瞬で返信が返ってくる。


水無瀬イツキ『会うのはキツイですか?話してもいいんですけど、僕は会ってみたいなって思ったんですよ。もっと仲良くなりたいし!』


水無瀬さん俺に会う気マンマンじゃない…?


「……会ってみるか?」


今までにストリーマーやvtuberの方には会ったことがない。……考えてみたらコラボしたのは最近が初めてだったわ。


「何事も経験か……」


活動者の人と会うのは経験になるのか分からんが、会ってみる価値はあるのかもしれない。


kai『今さっきの撤回します。会います。いつ頃いけばいいですか?』

水無瀬イツキ『会ってくれるんですか!?ありがとうございます!!時間は──』



2日後──



「如月カイさんですか…?」

「あっ、はい…」 



現在時刻15時。集合場所で待っていたら話かけられた。


「初めまして!水無瀬イツキです!」

「あっ、初めまして如月カイです」


水無瀬さんは身長が172センチの俺よりも小さかった。多分160前半ぐらいだろう。服装は白いパーカーに青いジーンズ。アクセサリー等はつけていない。リアルでも顔は男っぽくみえない。どちらかというと可愛い部類に入る美形である。声も一緒に配信した時と変わらず女の子っぽい。


「カイさん」

「は、はい」

「服装ジャージってどうなんです?」

「えっ、あっ、服があまりなくて…」

「後で服買いに行こっか」


水無瀬さんに言われた通りではあると思う。今日の俺の服装は黒ジャージだった。服があまりないのは本当です。信じてください。友達あんまりいなくて大学以外で外に出ないせいで服がないんです。てか、しれっとこの後服買いに行く事なってない?反射的に返事しちゃったけどさ。


「とりあえず本題に入りたいからそこのカフェ入ろっか」

「わ、分かりました」


―カフェ―


「こんにちはゲンさん!」

「おお、イツキ来たか。あっちの個室空いてっから使えるぞ」

「ありがとうゲンさん!カイさんカモン!」 「は、はい」


カフェの奥の方へ連れて行かれる。中々にオシャレなカフェだ。俺が入っていいのか分からないぐらいに。水無瀬さんと、このカフェの店長っぽい人は知り合いか?どっちも名前呼びしてるし。まぁ、これは聞かなくていいか。


「何か飲むか?」

「僕はアイスコーヒーを飲もっかな。カイさんは?」

「じ、じゃあカフェオレお願いします」

「分かった。すぐに持ってくるから待ってな」


マジですぐに持ってくるとは…そんなにすぐ持ってこれるもんなんですか?カフェで働いた事ないから知らないけど。


「さて、本題に入ろっか」

「は、はい。お願いします」


個室に入り座席に座って水無瀬さんと俺が頼んだ飲み物が来てからすぐに話が始まった。


「単刀直入に言うね。大会一緒に参加してくれる?」

「……もう一回言ってくださいますか?」

「大会一緒に参加してくれる?」

「……え?」


マジで言ってんですか水無瀬イツキさんや。


「ち、ちなみになんの大会でしょうか」

「聞いたことあるとは思うんだけど…Raising cupだね」

「……」


めちゃくちゃ有名な大会じゃないですかヤダー。


「僕は初めてこの大会に参加させてもらうんだ。リーダー枠を貰ったんだけど誘った人がちょっと予定で参加できなくなったんだよね」


「な、なるほど。で、でも俺なんかが参加していいんですか」

「大丈夫だよ。ヤマトさんは『面白そうだからいいんじゃね』って言ってたし」

「ま、マジで…?」

「マジだね」


Raisingのオーナーであるヤマトさんから既に俺の出場許可をもらってるって行動が早すぎませんか水無瀬さん。


「…いつからあるんですか?」

「確か7月30日にやるはずだから……今日は何日だっけ?」

「えっと、17日です」

「じゃあもう2週間ぐらいしかないんだね」 「そ、そうっすね」


きつくないかぁ?2週間ないじゃないですか。


「あ、あまり練習出来なさそうですね」

「スクリムあるよ」

「で、ですよねー」


まぁ、でしょうね。今までもあったもんね。急に無くなるわけないですよね。  


「す、スクリムっていつからですか?」

「多分来週の火曜からかな。それまでに顔合わせ配信したいんだよね。」  

「ち、ちなみにもう1人は──」

「あぁ、言ってなかったね。ごめんごめん」


知ってる方だといいなぁ。あおいさんとか。 「もう1人は星乃ひかりちゃんなんだけど知ってる?」

「い、いえ」


全く知らない人でした。後で調べとかなくちゃ。

「同じ事務所の先輩なんだよね」

「な、なるほど」

「あんまりabcxはしてないんだけど結構強いよ〜」

「さ、最高ランクはどこらへんでした?」 「ん〜?多分プラチナだと思うよ」

「お、おけです」

「できれば僕とひかりちゃんに諸々教えてほしい!」

「で、できればします」


星乃さんの最高ランクはプラチナか。あまりやっていないのにプラチナまで到達しているのなら相当な実力はあるだろう。けど、細かい部分がまだできてない可能性もある。……教えるのは…どうだろう。顔合わせ配信では俺のコミュ障が発揮されるだろうけど、大会本番までには少しでも話せるようになるといいなぁ。


「カイさん。Raising cup出てくれる?」 

「まぁ、はい。参加させていただきます」

「ありがとう!ホントに助かったよ!」

「そ、それなら良かったです」


水無瀬さんも困ってたんだろうな。俺を頼るぐらいには。俺を頼るなんか最終手段だと思いますよ。でも、大会に参加するからには中途半端な事は出来ないな。まぁ、大会とか出るの初めてなんですけど。もちろんスクリムも。


「顔合わせ配信は明日にはしたいね!」

「で、ですね」

「後で僕からひかりちゃんに連絡しとくよ!」 「お、お願いします」


絶対に星乃さんは俺の事知らないですよね。最初がマジで不安だわー。頑張って喋ろうね俺。


「話はこれで終わり!来てくれてありがとね!」 「は、はい。ありがとうございました」


気づけば1時間近く経っていた。思ったより話していたんだな。


「そういや、服買いに行くって言ってたよね」 「え、あ…」

「ちゃんと似合うの選んであげるよ」


言った覚えないですけど!?てか、誰かと一緒に買い物に行く事なんてなかったからどうすればいいか分からないんだけど。


「じゃあ行こっか。ゲンさんありがと!」  「おう!またな」

「あ、ありがとうございました」


カフェから出て、すぐ近くにショッピングモールがある 事を今、初めて知りました。めちゃくちゃ都合が良いですね。



―ショッピングモール―


「良いじゃん!似合ってるよ!」

「そ、そうですか?ありがとうございます」


どうも、現在着せ替え人形にされている如月カイです。 お店に入ってからずっとこうなってます。誰か助けてください。


「カイさんなんでも似合うじゃん!」


ファッションに無頓着すぎて分からないが似合ってるらしい。水無瀬さんのファッションセンスがただ良いだけだと思いますけどね。


「特に黒が似合ってるよ!これとこれ買っちゃおう!」

「え、あ、はい。分かりました」


何着か着せられた後、なんやかんやで2着買う事に決まった。水無瀬さん的に俺の服装は黒が似合ってるらしい。……値段そこそこあるくね?もしかしてブランド的な感じですか?


「ありがとうございましたー」


財布がスカスカになった気がします。活動頑張らなくちゃなぁ……。


「いや〜良い服あって良かったよ〜」

「あ、ありがとうございます。服選んでもらって」

「次に会う時はその服着てきてね〜」

「り、了解です」


次会う時はいつか分からないぜ!忘れないようにしなくちゃいけないなぁ。



「じゃあ、また明日配信で!後で連絡するね〜」 「わ、分かりました。また明日お願いします」 「うん!じゃあね!」


ショッピングモールを出た時には18時近くになっていた。ショッピングモールに着いた時は16時すぎだったはずなのに……。


「さて、調べるか」


水無瀬さんを見送った後、バス停でバスが来るのを待つ。水無瀬さんは電車で来ていたのかな?電車で来れる範囲ということは意外と近くに住んでいる可能性がある…?そんなしょうもない事を考えながら『星乃ひかり』 と某検索界隈の王で調べる。


「お、出てきた出てきた」


ものの数秒で検索結果が出てくる。すぐに調べ物ができるって良い時代になったなぁ。……なんでこんなおじさんみたいな思考になってんだ?一応俺はまだ19歳なんだよね。 星乃ひかり−−−彼女の検索結果の1番上に出てきたのは──


「生粋のクソゲーマニア……?」

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