第46話 オークキング①
オークの群れが残り少なくなったころ、集団の奥からひときわ強い
その威容は他のオーク共より二回りは大きく、腰ミノのみを身に纏い、その体には歌舞伎役者の隈取り模様のように魔力線? がまとわりついている。
「これは‥‥‥オークジェネラル、いや、キングに進化しているのか!」
エルネスト騎士団長曰く、この個体はオークキングであるらしい。
それを聞いた周りの騎士たちは顔面を蒼白にする。
後日聞いた話では、オークジェネラルならばBランクの冒険者パーティーが数組でどうにか討伐できるランクなのだが、ことキングに進化した個体となれが文字通り格が違うらしいのだ。
冒険者で言えばAランクの複数パーティー。騎士団で言えばその熟練度にもよるが、最低でも一個中隊(200名程度)の戦力を用意することが求められる敵である。
今の騎士たちの人数は団長を含めて10名と寡兵であるし、それに領兵や煌めきの狩猟団、ギルマスを足しても一個小隊(40人ほど)にも満たない数である。
数だけで言えば絶望するかのような戦力差であり、防衛隊の面々の足が竦む。
すると、
「ニンゲン、ドモ、オマエラノ、マチ。ゼンイン、ワレガ、クラッテ、ヤロウ」
なんだと?!
このオークキングは、なんと人語を操って見せた。
確かに、森の集落で見たオーク共は独自の言語で意思疎通を図っていた。
それは、オークにも知性というものがあることをうかがわせた。
だが、人語を操るとなるとその知性は単に『ある』にとどまらす、それなりに『高い』知性を持っていることになる。
という事は、この個体は単に強さが頭抜けているいるのみならず、狡猾な戦い方も可能だという事だ。
もしかして、上級に位置する魔法も操れるのかもしれない。
そんなことを考えていると、周囲の魔力がオークキングに集まり始める感覚!
なんかやばいぞ!
「ピィ!」
「「散開しろ!」」
オレが鳴くと同時に団長さんとギルマスも叫ぶ。
そして、散開を終えたオレたちがさっきまで立っていた場所には、太い氷の槍が猛スピードで飛んできていた。
「氷の魔法だと?!」
団長さんが驚きの声を上げる。
団長さんをはじめ、ギルマスや騎士団達まで驚いているところを見ると、おそらくこの氷魔法というやつは結構難しい部類の魔法なのではないかとあたりを付ける。
火とか水とか土、そして風はたしか4大属性とか言うんだっけか?
前世の記憶を手繰り寄せる。
そこから考えると、氷属性というのはその上位の属性、もしくは水属性の発展形なのではないか?
そこまで考えたとき、オレの心の奥に震えが訪れる。
その震えは恐怖からではなく、氷の冷たさからでもなく、期待から来るほうのそれだ。
やっべえ! こいつ、人語を操るほかに氷の魔法まで扱いやがる!
ってことは! こいつを倒して、オーク100体討伐ボーナスを獲得すれば『人語行使』とか、『氷魔法Lv○』とかが手に入るじゃないか!
『氷魔法』は戦闘能力向上はもちろんの事、食品の保存とかにも利用できるかもしれない。
穴をほりほりして、氷室とか作ればこれまで廃棄していたオーク肉とかも安全に保管できるだろうし。
それに、なんといっても『人語行使』ですよ奥さん。
今のオレは人語は理解できるし、読み書きも可能だ。まあ、「書き」のほうは若干怪しいが。
ウサギにしてはハイスペックな自覚はあるが、これでさらに人語を話せるようになったら‥‥‥うん、バケモノかな?
しゃべるウサギはさすがに気味悪がられるとは思うが、『獣人』に進化する為には必要なファクターだ。
人間や亜人を殺すなんてことは盗賊とか悪党と相対したときくらいしか機会はないだろうし、それに同一人種(人間とかエルフとか)を100人も殺すのかという懸念も生じる。
なので、このチャンスは逃してはならない。
オークキングは、オレが殺る!
オレは「ぴぃっ!」とひと鳴きしてオークキングに向けて疾走する。
オークキングとの距離を詰めるにあたり『脱兎』を使うか迷ったのだが、脱兎の場合、オレの後方にいる存在から逃げるという脳内設定を行わなくてはならない。
この場合は逃走ではなく攻撃なので、『脱兎』の発動後に再度攻撃目標を定めて攻撃アクションをとるという2度手間が発生する。
なので、高速移動と攻撃対象指定の両方を一度に行える『突進』を選択!
『突進』はイノシシさんから手に入れたスキルだ。
手に入れた当初は、「敵にぶち当たるか一定の距離を移動するまで方向転換不可」という縛りがあるので使いづらいスキルだなと思っていたのだが、こんな状況ではベストチョイスになる。
氷魔法の発動後の硬直があるのか、無防備になったオークキングに肉薄。
硬直がようやく解けたキングはオレの突進に対応して持っているこん棒を大きく振り上げる!
だが、そのこん棒が振り下ろされるよりも早く、オレの角がキングの胸板に接触する!
「
そう確信した瞬間、オレの視界はブラックアウトし、オレは意識を失ってしまった。
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この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!
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