第30話 ウサギのリハウス

 ブタニクは美味かった。


 これからも継続してオークを狩ろうと決意したハクトです。



 でもですね。


 オレのマイスイートホームからオークの生息地が遠いんですよね。


 ウサギのオレは巾着袋一つ分しか運搬能力がないこともあいまって、肉塊を毎回ホームに運ぶのは手間なんです。


 ということで。


 新たな物件を探そうと思います。



◇ ◇ ◇ ◇



 新居の希望は、位置的には前回の木の洞ハウスより森の奥。


 冒険者たちが落としていった地図でいうと、オークの生息地に近い方。


 んー、たぶん、地図の見方あってるよな?


 街があっちの方向で、オークの出現位置がこのへんだとすれば。


 今オレがいる所は地図上では上から三分の一で中央よりやや左よりのこのへんだと思うのだが。


 この場所に来るまでには、ゾンビさんの沸いている瘴気の濃い場所を通過してきたのだが、地図にはその記載がないからちょっと不安だ。


 まあ、そんな正確な地図じゃないんだろうが、もっと目印があれば良かったなと思うのはないものねだりの思考なんだろう。



 よし、このへんだと瘴気の影響もないし、オークの生息地からも少し離れている。


 このへんで、地面をたしたしして周辺のエコーソナーを発動する。


 え? 探すのは木の洞なんじゃないかって?


 うん、確かに木の洞は居住性はいいんだけれど、最近オレも荷物が増えてきていてだな。


 文化的な生活を送るウサギとしては、人間が作った薬草カゴとか、金属の皿兼フライパンとかが必要なわけですよ。


 木の洞だと、そんな文化的な道具の収納スペースが確保できないんですね。


 ということで、狙うは洞窟。


 ほどよい広さがあって、道具もしまえる収納付き物件を探索中です。


 しまっちゃうおじさんにしまわれてしまわないようにできれば裏にも出口とかあればなおいいのだが。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 む。


 この反応は。


 地面から突き出た大きな硬い層の内側に、程よい広さの反響音。


 洞窟を発見しました。





 はい、洞窟の入り口にやってまいりました。


 なんか昔の、某カワグチさんの探検隊を思い出すな。


 人類最初に足を踏み入れますとか言って、すでにカメラさんと照明さんが中に入って待っているアレだ。


 まあ、それはどうでもいい。



 で、洞窟ですが、入り口は結構広い。


 成人男性でも体をかがめずに3人くらいが並んで通れそうな広さです。


 ウサギのオレにとっては広すぎる感があるのだが、あまり贅沢も言っていられない。


 重要なのは居住性と自分に言い聞かせながら中を探る。




「先客がいるな」


 洞窟入り口でたしたしして反響音を確認してみると、中に数多くの生物の反応がある。

 

 どうしよう。


 木の洞ハウスの時には先住民がいれば遠慮していたのだが。


 でも、あの時はリスさんとか無害な小動物だったからな。


 うん、とりあえず、中の先住民さんにご挨拶してみてから考えよう。


 といっても、だいたい中に居る人の種類は予想が出来てしまっているのだが。


 だって、その先住民さん、天井に張り付いてぶら下がってるんですよ?


 洞窟のなかで上からぶら下がっているなんて、もうアレで確定だと思うんですよ。





 はい、コウモリさんでした。


 洞窟にオレが入っていくと、たくさんのコウモリさん達がバサバサとオレに襲い掛かってきちゃいましたね。


 洞窟内は真っ暗なので見つからない様に足音を消して歩いていったのだが、向こうも超音波とかの能力を持っているからなのか、とっても早い段階で見つかりました。


 そして、コウモリさん達は次から次へと洞窟内を飛びながら、鋭い牙でオレに次々と飛び掛かってきます。


 こりゃたまらんと退避しようとしたのだが、ふと気づくとコウモリさん達の動きがそんなに早くない。というか、遅く感じられる。


 AGI三桁の数字を叩き出したオレのステータスのおかげなのか、飛び回るコウモリさんたちが、まるでふわふわと飛んでいる紙飛行機くらいの速度に感じられるのだ。


 これは逃げる必要はないなと思い直し、飛び掛かってくるコウモリを躱しながら作戦を考える。


 真っ向勝負でも勝てるとは思うのだが、いかんせん数が多すぎる。


 躱すのは余裕でも、これにこちらからの攻撃を加えるとなれば余裕がなくなって相手の攻撃もくらってしまうだろう。


「あ、そういえば」


 あのスキルを試してみるか。




「『遠吠え』!」


 コボルドさんを倒して手に入れた遠吠えのスキルを始めて使ってみる。


 このスキルには(威嚇小)の効果がありまして、あ、コウモリたちがぼたぼたと地上に落ちてきましたね。


 ウサギが吠える絵ずらもシュールだが、それを喰らって墜落するコウモリもまた不思議な感じだな。


 あ、ちなみに、ウサギの遠吠えは「わおーーーーん」ではなくで「ぴいいいいいいいーー」ですからね奥さん!


 


 はい、ということで、先住民さんを追い出すのにはいくばくかの心理的抵抗を持っていたわたくしでしたが、向こうが先に攻撃してきたという正当防衛の理論で殲滅させていただきます。


 え? 正当防衛よりもお前の不法侵入が先じゃないかって?


 ぴゅーぴゅーぴゅー(口笛)










ーーーーーーーー


 いやー、30話ですよ奥さん!


 これからもよろしくね!


          ハクト

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