第27話 郷愁ウサギ
はむはむ
ヤキニクうめえ!
もっさもっさ
草(薬草)もうめえ!
肉だけだと栄養が偏るのでしっかりと野菜も食べる、ウサギのハクトです。
狼モモニクの美味いところを食べ終わり、ちょっとお肉の残ったホネを見ていたら、あることを思いついた。
「このホネ
お皿に生活魔法で水を入れ、ホネを投入。
そのまま弱火でコトコト煮込みます。
水がお湯になり、お湯が沸騰して表面に肉の脂がキラキラと輝いてきたタイミングで薪の木の枝に土をかけて火を止める。
そして程よく冷ました後に、舌をチロッと入れて味見する!
味見したけど味が無え!
やっぱ塩入れないとダメなんですねー。
ちょっと悔しいので味なしモモガラスープに草を入れて煮てみます。
お、これはそれなりにイけるかもしれん。
塩味がないとはいえ、なんとなく日本にいた時のヘルシーポトフみたいな感じがして‥‥‥おっと、なぜだか涙が出てきたぜ。
そういえば、焼いた肉は食ったが温かい菜を食ったのはウサギになってから初めてだ。
なんというか、焼いた肉を食った時よりも、人間でいたころのことを思い出してどんどん涙があふれだしてきた。
文化的な生活が恋しい。
確かに人間でいたころは、学業で追い詰められたりとか、人間関係とかが面倒くさくてどこか知らない土地で一人になりたいなんて思った時もあった。
だけど、実際に知らない土地でいざ一人? 一匹? になってみると寂しくて切なくてたまらない。
普段は考えない様にしていたことが、次々と脳裏に浮かんでくる。
日本では彼女なんていなかったけれど、気になる娘はいた。
大学で同じゼミの
彼氏とかできちゃったかな?
オレが突然死んじゃったことで悲しんでくれたりするのかな?
やばい、
この心理状態はヤバイ。
こんな時は、腹いっぱい食って寝るに限る。
オレは『食いだめ』が発動するほど肉と草を喰らい、マイホームの木の洞の中を涙で濡らしながら眠るのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
おはようございます。
人間に戻りたくて涙を流したウサギのハクトです。
出来ることなら人間に戻って日本にも戻りたいとです。
人間に戻れるかもしれない可能性は見えてきたが、日本に戻れるかと言えば難しいだろう。
なんせ、オレは日本で死んだっぽいからな。
ゾンビになってまで墓の下からよみがえりたいとは思わない。いや、日本は火葬だからスケルトンか。
ということで、人間、いや、ウサギ獣人になるべく今日も森を徘徊する。
探しているのは2足歩行の魔物。
『2足歩行適応』ってスキル? 因子? を取り込み、存在進化の手がかり足がかりを手に入れるためだ。
これまでに100匹倒した2足歩行の魔物は3種類。
コボルドにコボルドゾンビ、そしてゴブだ。
ゴブを倒した時は、『生活魔法』を選択したので2足歩行適応の因子を手に入れたのはコボルドとコボルドゾンビの2種類。
『2足歩行適応(極小)』を2回手に入れ、統合されて『2足歩行適応(小)』になっているのが現状だ。
この(小)を(大)とかにするには最低でもあと3~4種類の2足歩行の魔物を討伐しなくてはならないだろうことは想像がつく。
でも、居ねえんだよな。
冒険者たちが落としていった地図には、森の奥の方にオークがいると書いてある。
だが、いくらオレの聴覚ソナーや嗅覚感知、熱感知を使っても、今いる現在位置が森のどのへんなのかわからねえ。
つまり、地図はあっても、どっちが森の奥なのかわかんねえんだよな。
よし、こうなったら。
あんまり気は進まないが、あの方法で行こう。
◇ ◇ ◇ ◇
「んー、やっぱりなんとなく不気味だなー」
オレがやってきたのは、以前コボルドさんがゾンビになっていた場所の奥。
コボルドさんがゾンビになるという事で、魔素というか、瘴気かな? それが濃いと思われる方にやってきた。
オレが狙うのはアンデッド。
『2足歩行の魔物』と言って想像できたのが、もはやオーク以外にはそれしかいない。
コボルド、ゴブリン、オーク。それ以外の2足歩行はオレのウサギ脳にはいくら考えても思いつかなかったのだ。
なので、スケルトンでもいないかなと思ってここまでやってきたわけだ。
でも、スケルトンって元は人間って言う設定だよな?
こんな森の奥まで人間入ってくるかな?
入ってきたとしても、100体も発生するかな?
オレは周りを見渡す、というか、視覚はカスなので嗅覚と聴覚のソナーを使用する。
あたりは瘴気が濃いこともあって、もともと陽が当たらなく鬱蒼としている森がよけいに暗くなっている。
なんというか、夜の闇とはまた違った感じの闇というか。
墨汁を空気に幾重も溶け込ませて濃くしたような感覚だ。
ん? 何かいるな。
オレは足音を消し、色を変えて黒くした体毛のままでそちらの方に近づいて様子を伺うのであった。
ーーーーーーーー
現在90話までストック中です!
まだしばらくは続きますのでお付き合いいただければ幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます