第26話 ゴブ集落の戦利品

 ゴブ集落の制圧完了。


 この群れのボスはやはり大きなゴブで、副リーダーが魔法ゴブだったみたい。


 他に戦えるゴブは残っていないようで、メスとかガキのゴブは建物の中で息をひそめている。


 どこぞの物語のように、集落の建物のどこかに攫われた若い女性が捕まっているようなこともなかったのでそれは良かったと思う。


 もしそんな人がいて保護するとか街に送るとかになってもウサギのオレにはどうすることもできないからな。


 さて。このあとどうしようか。


 戦利品でも漁るかな?



 金貨とか財宝があったとしても、ウサギに小判であって使い道がないのだが、なんとなく興味本位で漁ってみました。


 そうしたら、なんと、見つけてしまいましたよ!


 今のオレにとっての最高のご褒美が!


 ゴブの食糧庫から、干し肉を発見しましたー! やったね!








 

◇ ◇ ◇ ◇

 




「ウォオオオオエエエエエエエエエエエエ!!!!」


 ちくしょう、腐ってやがる!


 『消化促進』とか『暴食』とかのスキルがあるから大丈夫かなと思ったけど腐肉は腐肉だった!


 ゾンビさんの腐肉ほどではないが、味覚はもちろん強化された嗅覚に大ダメージを受ける。


 口に入れる前に気付けよオレ。


 大事に保管していたところを見ると、ゴブどもはこんな腐った肉でも普通に食うのかな?


 残されたガキゴブどもが食うかもしれないから、口を付けた1枚以外は元のところに戻しておく。


 『生活魔法』で水を出して口をゆすぎ、クリーンと歯磨きを発動させてようやく落ち着く。

 生活魔法が便利なのはいいが、他の使い道をしたいと思う今日この頃。



 干し肉以外の戦利品として、金属で作られた深めのお皿と巾着袋を頂戴する。


 やっぱお皿とかないと、生活魔法で水出しても飲めねえしな。今後お肉とか加熱調理することになってもやっぱりお皿は必要になる。うん、これは役に立ちますね。


 そしてもう一つの戦利品、巾着袋だが、ウサギのオレにはなにかアイテムを手に入れても運ぶ手段がない。まだ前足うまく使えないしな。

 なので、この巾着にアイテムを入れてリュックのように背中に背負うことでウサギに運搬能力が加わったというわけだ。


 もちろん、お皿も巾着に入れてマイハウスまで持っていきますよ。



 回りで怯えているメスのゴブちゃんとかがかわいそうなので、恐怖の対象であるオレはゴブ集落を後にする。



◇ ◇ ◇ ◇ 



「おお、燃えている」


 マイハウスに戻って一休みした後、手に入れた『生活魔法』の検証を行ってみる。


 そこら辺にある乾燥した小枝を数本集めて着火してみると、無事に火種が生成されて枯れ木に燃え移った。


 生活魔法は便利だ。


 通常の魔法であれば、火とか水とか各系統ごとに習得していかなくてはいけないところだが、威力は極小ながらも火も水も使える。


 戦闘用に使うには威力が不足し過ぎているが、それは仕方がないだろう。


 さっそく、ゴブ集落で手に入れた金属製の皿に水を出し、小枝に点いた火で温めて飲んでみる。


 うん、異世界初のあったかい飲食物だ。白湯うめえ。


 金属製の皿があってよかった。木製だと燃えちゃいそうだからな。


 これで簡易な調理も出来るという事に相成ったわけだ。




 

 調理してえ。肉焼きてえ。


 早いとこ焼いた肉が食いたいところだが、あいにくこの辺には焼いて食えそうな肉を持った魔物がいねえ。


 狼さんの肉食えねえかな?

 

 日本ではそもそも狼はいねえが、犬を食べる地域が昔あったようなことは聞いたことがある。


 犬も猫も好きなオレとしてはあまり考えたくはないが、他の国ではワンちゃんとかも普通に食べる文化? 風習? があるのは確かだから、狼さんの肉はたぶん食えるのだろう。


 よし、狩ってくるか。




  シュパッ



 角狼さんの首を切る。


 たしか物語だと、この後足を縛って木に吊るして血抜きとかするはずだ。


 ロープなんてないからその辺から丈夫そうな草の蔓を見つけてくる。


 そして足をまとめて縛って‥‥‥うん、縛るどころか足をまとめることもできませんね。


 なので血抜きはあきらめる。


 多少血なまぐさくても焼けば何とかなるだろう。


 で、解体を‥‥‥ナイフ持てねえ。


 多少は前足の器用度が上がったからどうにかならないかと試してみたが、ウサギに解体はまだ無理なようだ。


 むう、あきらめるしかないか。


 いや待て。



 オレさっき、この狼さんの首を切断したよな?


 そうか、この『自在牙』で切り刻めばどうにかなりそうだ。

 


  シュパッ シュパッ

 

 狼さんを食肉に加工します。


 とはいっても細かい作業は無理なので、とりあえず一番うまそうで切り取りやすいモモニクを準備します。ムネニクを切り出すのは無理でした。


 そして体毛をむしりたいのだが‥‥‥できねえな。


 仕方がないのでモモニクを直火であぶって毛を燃やしながら火を通す。


 あ、かまどは土魔法でよさげに作りました。


 そしていよいよ、火の通った狼モモニクにかぶりつく!



「うんめーーーーーーーーーー!!」


 焼け残った毛の根元が邪魔でぺっぺぺっぺと吐き出しながらだが、オレはこの異世界に来て初めてのヤキニクを食することが出来たのであった。









ーーーーーーーー


 この度は、『うさぎ転生~角ウサギに転生した元日本人は、日本食食べたさに兎獣人への進化を目指す~』を呼んでいただき誠にありがとうございます!


 もし、少しでも『面白い』『続きが呼んでみたい』等々の感想を抱いていただいたのであれば、作者のモチベーションに繋がりますので、★や♡での応援や、フォローやコメントをいただければ幸いです!

   

 


 


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